「まだ仕事中なら待ってるよ」
宇都宮は気さくに言って、ソファに腰を降ろした。
「あ、はい、すみません、あと一枚なんですが……」
良太は慌ててキーボードを叩く。
「どうぞ」
帰りがけていた鈴木さんがすぐにアイスコーヒーを持って宇都宮の前のテーブルに置いた。
「すみません、急におしかけて」
「これからお仕事ですの?」
「いえ、ちょっと良太ちゃんと約束してて」
「まあ、そうですの。ごゆっくり」
鈴木さんが帰っても、まだ良太の仕事は終わらなかった。
その間、宇都宮は呑気そうに、ラックに置いてある雑誌などを見ながら、静かに待っていた。
「お待たせしました」
慌てて良太が立ち上がると、「慌てなくていいからね」と宇都宮は微笑んだ。
猫たちにご飯をやってから着替える間もなく駐車場に降りていくと、宇都宮が車にもたれて待っていた。
この人、ほんと、イチイチポーズがさまになるよな。
自然にやってるってのがもうセンスってことだな。
宇都宮にナビシートに促されて良太が乗り込むと、車は通りへと出て行った。
「もう、鍋の用意はできてるからね」
「え、そうなんですか? って、宇都宮さんが?」
「実は俺、料理好きなんだ。たまにやるからだけどね。楽しみにしてて」
「はい」
宇都宮のような男が料理をやるとは意外だと良太は思った。
あ、でも前に食事した時、ちゃっちゃか料理を取り分けてくれたりしてたっけ。
「え、やっぱ、ひとみさんと須永さんと俺と、四人だけなんですか?」
「まあね、今日はゆったり飲みたいしさ」
シンプルな白いベンツのステーションワゴンは滑るように麻布通りから第一京浜を経て御殿山へと走った。
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