翌朝五時半の漁業体験に間に合わなくなると慌てて眠ったのが午前二時、約三時間寝ただけで三人は目覚ましに起こされた。
海岸から見た海とは全く違っていた。
船に乗り込んでどこを向いても海の上で漁師たちが動めく姿は見ているだけですがすがしくさえ思えた。
波しぶきや海や魚や船のにおい、そういったものをじかに感じられただけで、良太は小学生のように始終わくわくしていた。
こうしたまさしく荒ぶる仕事をしている者たちから、佐々木や良太などは『じょうちゃん』『ぼっちゃん』などと呼ばれても、差別だの何だのを超越して笑った。
まあ、案の定、佐々木などは、女の子じゃないの? などと真顔で聞かれてしまっていた。
確かに鈴木さんの言う通り、鬱々とした気分に押しつぶされそうな毎日だったが、能登の仕事は、何だか修学旅行気分で久々楽しい時間だったな、と良太は思い出して微笑んだ。
「うーん、とにかく明日もがんばって、自分の仕事するっきゃないよな!」
そう口にして、良太はオフィスの明かりを消した。
水曜日になるともう夏の気配がすぐそこまできてかなり蒸し暑かった。
夕方、白のステーションワゴンが青山プロダクションの駐車場に停まった。
「やほ! 迎えに来たよ」
良太はオフィスのドアが開いて颯爽と入ってきた白のTシャツにジーンズ、サングラスの長身の男を見上げてちょっと驚いた。
「まあ、宇都宮さん」
帰り支度をしていた鈴木さんも足を止めてサングラスを取った渋いイケメンを見つめた。
「え、びっくりした、宇都宮さん、俺、自分で行ったのに」
まさか宇都宮自身が迎えに来るとは、良太も思っていなかったのだが。
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