風そよぐ62

back  next  top  Novels


 藤堂と佐々木には一部屋ずつと思っていたのが、撮影スタッフ全員を入れると、部屋がどうしても取れないとホテル側から言われ、藤堂と佐々木に打診したところ、三人一緒でいいだろうということになって、広い和室に三人で泊まったのだが、宴会場から部屋に戻ってからまた三人で飲んだのだ。
 これを沢村が知ったら悔しがるだろうな。
 最近、調子が上がってホームランを量産している人気スラッガーの顔を思い浮かべる。
「いや、俺らみたい弱小会社からしたらもう英報堂なんて目ぇの仇みたいやったもんな」
「それを言ったら、ジャストエージェンシーの佐々木と言えば、いかなるヘッドハントも蹴りまくって、あの弱小会社から離れないのは謎でしかない、と評判でしたよ」
 二人がそれぞれ前の会社にいた頃の話をし始めると止まらなかった。
「それ、ほんまに俺、ものぐさやっただけで、春日さんにとうとう放り出されるまでは、のんびりやっとったのに、今はそれこそ荒波にもまれとる感じや」
 佐々木が笑う。
「英報堂でも河崎さんと藤堂さんて、エリート中のエリートだったって、直ちゃん情報ですけど」
 良太が言うと、それや、と佐々木が良太を振り返る。
「俺より、うちの営業らが、コンペで二人の名前が挙がると、もう、負けた~ってやる前から尻尾巻いてたわ」
「そんなにすごかったんですねぇ、藤堂さん。そういうとこ、俺、知らないから、いつも美味しいもん持ってきてくれる人だなあとか」
 感心して良太は藤堂を見つめた。
「いや、良太ちゃんが正しい。俺は美味しいもん上げるのが好きな、サンタさんでいたいのに、噂なんてもんは勝手に独り歩きして、実際の人物像をゆがめてしまうんだ」
 うん、と藤堂は一人頷く。
「でも、極め付きは、あのスキーツアーやったな~」
 佐々木が言い出すと、藤堂も「ああ、あれな、俺らとジャストエージェンシーご一行様が出くわしたやつ」と話を引き継いで、「でも実は、あれには裏があったんだ」と言い出すと、良太も佐々木も興味津々で藤堂に話を促し、寝不足は確定した。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
いつもありがとうございます