「あら、だって、高広の後継ぐって息巻いてたじゃない、良太ちゃん」
日本酒をとぽとぽとグラスに注ぎながら、ひとみが言った。
「アハハ、それって、今思うと恥ずかしいです。後継ぐとか身の程知らずっつうか、ろくな仕事もやったことないのに、何言っちゃってんだろうって」
「あのね、何を持ってろくな仕事って言いたいのか知らないけど……」
「俺、父母妹に、俺はこういう仕事をしてるんだぞって、言えないんです」
ひとみの言葉を遮って良太は言った。
「そもそも、これって、仕事って言えるのかなって。あちこちでちょっとずつ手伝って、みんなの手の及ばないとこ補ってとか、何でも屋っていえば体裁よく聞こえるかもだけど」
良太は自嘲する。
「いや単に、周りがそういういろんな才能が溢れてるから羨ましいだけかも。俳優さんたち、若い竹野さんも毒を吐くだけのことがあるっていうか、今回圧倒されましたもん。本谷さんも、出るたびに輝きが増してるって感じで」
「本谷ねぇ、ほんと、今回、見てて、ハッとするような風情を見せたりしてたわ」
ひとみの何気ないその言葉は、良太の胸にもろに突き刺さった。
「あの子、そろそろ輝きだしたわね」
「確かに、彼、伸びてるよね。いきなり脱皮するかもね」
そうそう、と宇都宮も同意する。
「彼、面白いなと思ってみてたんだよ。セリフなんかやってるうちにうまくなるもんだけど、たたずまいだけはね、天性のものってあるかもね~」
それは良太も本谷の演技を見ていて最近それを感じていた。
竹野にがーがー言われた時は、しゅんとなっていた本谷だが、打たれ強いというのか、そういうことをばねに成長できるタイプなんだろう。
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