でも、それ以上に、本谷にそういう資質があるだろうことは、良太でさえわかるのだから、当然工藤にはわかっているに違いない。
そして工藤はそういう人間を伸ばしてやろうと考えないはずはないのだ。
「でも俺なんか、広瀬さん、羨ましいっすよ。T大出てるし、青山プロダクションに入って、あの工藤さんの元で仕事できるとか」
口を挟んだのはもうかなりできあがっている須永だった。
「俺なんて三流大出て、やっと入った二流会社がブラックで、一年で辞めたのはいいけど、再就職なんかなかなかできなくて、田舎の親には仕事ないんなら帰ってきて店手伝えって言われるし、うち栃木で電気屋やってんすけどね、で、もうこれは帰るっきゃないか、と思ってた矢先、大学ン時のダチが、きっついだけの仕事だけどやるかって声かけてくれて、それが東洋プロって大手の芸能プロダクションだったから、こりゃ無理だと思ってたらすぐ仕事にかかれって」
真っ赤な顔で須永が続けた。
「俺なんか右も左もわからない業界で、しかも、大女優のひとみさんのマネージャーでしょ? 最初なんか狐につままれたみたいに、はいはいって動いてて、そしたらしばらくして、同僚のマネージャーから、ひとみさん、マネージャーすぐ辞めさせるから続かなくて、俺の前のマネージャーって、ひとみさんと大喧嘩して辞めたとかって、俺、ひええええって震え上がりましたもん」
「今頃何言ってんのよ、辞めさせてたら、今、あなたここにいないわよ」
黙って聞いていたひとみが文句を言う。
「ハハ、そうなんすよね、結局ひとみさん、独立して個人事務所開いた時、俺も連れてきてもらって」
「何か、俺と似たような展開じゃないですか、お互い気づいたらこういう仕事してましたって」
良太もワインの次に日本酒なんかをゴクゴク飲んだものだから、いい加減酔いが回り始めていた。
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