風そよぐ8

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 ちょうどやっていた番組は昼のニュースショーだった。
 評論家という顔をした数人がデスクに座りああだこうだと持論を述べている。
 先頃贈賄の容疑で取り調べを受けた衆議院議員の話題が終わったところで、CMが入った。
「ほな、この人」
 まったく適当に千雪は言ったのだろうが、保険のCMで、今人気の若手女優と一緒に出ていたのは、本谷和正だった。
「ああ、本谷さんか………」
 ちょっと人気が出てきたところで、事務所の思惑から無理やり連ドラの主演をはらされて、それがたまたま工藤が関わっていたため、最初は学芸会以下だとかクソミソに罵倒されていたのだが、案外打たれ強かったというか、科白はどうでも表情がよくなったと、ドラマの視聴率が微増だが右肩上がりのみならず、ネット配信の状況もまずまずだった。
で、ついこの間も、『田園』に出演が決まっていたスポンサー押しの俳優が、主演の竹野紗英と密かに付き合っていてしかも手ひどくふられた事実が発覚して降板してしまい、脚本家の坂口陽介から良太に誰か探してくれと丸投げされ、つい、うっかり本谷の名前を出したところ、事務所側もGOサインを出したという、今となってはこれからブレイク間違いなしだろう俳優の一人だった。
「おい、適当にいうたんやで。ほんまにこいつにするわけやないやろ?」
 ちょっと考え込んだ良太の顔を千雪はのぞき込む。
「いや、この人、今人気上昇中で、CMも増えてるんですよ。人選としては悪くはないんですけど。確か、原作では人のいいリーマンが事件に巻き込まれて被疑者にされるという設定ですよね?」
「まあ、せやけど」
「本谷もともとリーマンだったみたいだし、悪くはないんですよねえ」
 しかしここにきてまた本谷か、という展開だ。
 『田園』の時は、ほんとに時間もなく、うっかり頭に浮かんだ本谷の名前を出したら、坂口がOKしたという成り行きだったのだが、ひっかかりは本谷の実力とかには関係のないところにあった。
 実は、本谷が主演ドラマの撮影が行われていたスタジオに顔を出していた工藤を迎えに行った際、たまたま聞いてしまったのだ、本谷が工藤に告白するのを。

 


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