「はあ、辻さんも、夏休み、ですか?」
意外なところで会うな、と良太は辻を見上げた。
「まあ、そんなとこ? 今日はモリーは一緒やないん?」
「はい、一足先に帰りました。俺は明日のパーティに出なくちゃなんで」
すると辻は「ああ、なるほど」と頷いた。
「お待たせ」
贈答用の包装を頼んだ良太より、白石の方が先に会計を済ませて、嬉しそうにパティシェリの袋を下げている。
「ほなな」
辻と白石が出ていくのを見つめながら良太は小首を傾げた。
「夏休み? うーん、まさか、猫の手軍団も慰労会ってわけじゃないよな」
白石はケーキを五つずつ買っていたから、五人でコテージに?
何か、怪しいな。
五人揃って、しかも千雪さんも近くにいるし、また何かあるんじゃないよな。
と良太が思うのは、前回綾小路のパーティに参加した時に、招待客の高級車を狙った車の窃盗グループがパーティ会場に入り込んでいたところを、千雪や京助、それにどうやら猫の手軍団が手を貸して捕まえたという経緯があるのだ。
良太は一抹の不安を感じて、再び小首を傾げた。
猫の手軍団といえばこれまで、幾度となく良太も会社としてもお世話になっている。
猫の手軍団のブレイン、代表の加藤を筆頭に、中古車販売会社の横須賀支店長でもある辻やバイク乗り仲間だったという白石らはバイクや車を駆使して、警備、調査、張り込みと、腕に自信のある者ばかりが集まって必要な時に必要な手を貸します、ということで、最近会社組織になった。
「気になるな」
ぼんやりと口にした良太の背後で、「何がだ?」と言う声がした。
「あ、工藤さん、猫の手軍団に会いませんでした?」
「加藤が表にいたな」
「やっぱり! 猫の手軍団が五人とも軽井沢入りしてるんです。絶対何かあるんですよ」
良太は工藤に訴えた。
「何かって何がだ?」
「何がって、何かですよ。前回のパーティの時も千雪さんらと窃盗グループ捕まえたのって、猫の手さんですよ」
工藤は少し険しい顔をしたものの、「セレブが山ほど入ってるからな。綾小路が警備に呼んだんじゃないのか?」と言う。
「まあ、それならいいんですけどね」
海外の大物財界人もボディガード付きで入っているという話を、良太は吉川からも聞いている。
各企業のトップも無論自前でボディガードくらいはついているはずだ。
いくら何でもパーティをやるたびに事件など起こるわけがないと、良太は自分を納得させた。
買い物を済ませると、工藤はすぐに別荘には戻らず、ショッピングプラザへと車を回すと、たったかブランドショップに入っていく。
「何か買うんですか?」
速足で歩く工藤についてきた良太は、店内を見回しながら聞いた。
すると工藤は目に着いたタイを手に取った。
イエローの地に臙脂のモチーフが散りばめられたシルクジャガードのタイは、どちらかというと渋い目のいで立ちが多い工藤にはあまり似合いそうにないと良太には思われた。
この際、若返りを図るとか?
工藤は臙脂のものと二本購入した。
「贈り物ですか?」
スタッフが暢気そうに聞いた。
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