年々暑さは酷くなっているが、東京の気温より二、三度は低ければ、体感はまだ涼しく感じられる。
「でもやっぱ直射暑いですよね~」
カメヤの駐車場で車を降りた工藤と良太はきつい日差しを浴びながらエントランスにたどり着いた。
別荘にいる時の工藤は紺のシャツに黒のコットンパンツで髪も撫でつけていないせいかラフにしていると若く見える。
オヤジが若く見えるとか、いつもと違ってカッコいいとか俺の目は相当腐ってる。
良太は自分に呆れたが、「坊ちゃん、せっかくいつもより若い感じなんですから、顰め面はよくないですよ」と工藤は杉田さんにも言われていた。
スーパーカメヤは高級食材から生鮮食料品まで豊富に揃っている大型スーパーだ。
ベーカリーやパティスリーからペットサロンまで併設し、地元住民のみならず季節ごとに大挙して訪れる別荘族の御用達でもある。
「じゃ、俺、杉田さんに頼まれたもの買いますね」
良太が言うと、工藤は、おう、とだけ答えてカートを引き寄せると、リカーショップへ入っていった。
「えっと、鮭、鮭」
魚売り場で足を止めると、良太はたくさん並んでいる鮭の切り身を見まわした。
杉田に渡されたメモには、他に卵、納豆、わかめなど、和食に使うのだろう食材が書かれていた。
おそらく明日の朝食のためのものだろう。
ヨーグルトや牛乳は良太用にと考えてくれたものだ。
それに生クリームやイチゴなどはケーキを作るために違いない。
良太は杉田のメモの食材をかごに入れると今度はパティシェリへと急ぐ。
明日の綾小路への土産には、千雪から仕入れた情報で、ここに抹茶ソースのパンナコッタがあると聞いて、それにしようと決めていたのだ。
ショーケースにパンナコッタをみつけた良太は、スタッフに十個箱に入れてくれるように頼むと顔を上げた。
「あっと、チーズケーキ五個とショートケーキ五個お願いします」
横にいた大きな男が野太い声で言った。
甘党の男性も最近多いからな、どんな顔で食べるんだろうとさり気に横に立つ男を見た。
「え、ウソ、白石、さん?」
東京から遠く離れたここ軽井沢で、しかも観光客でごった返すこの軽井沢で、よく知った顔に出くわす確率ってどのくらいあるんだ? と良太は思わず次の言葉が出てこない。
「お、良太ちゃんじゃない。偶然! 明日のパーティに出るんだっけ?」
一八〇センチをゆうに超える長身に横も負けてはいないがっしりタイプ。
「白石さんこそ、どうして?」
「うん、まあ、夏休み、みたいなもん?」
「あ、そうなんですか」
「良太ちゃんは、工藤さんとこの別荘にいるんだよね? 俺らはここの近くのコテージ」
「あ、そうなんですか」
良太は語彙を忘れたかのように同じ言葉を繰り返した。
俺らってことは、他のメンバーも?
「あっちゃん、はよ、せいや」
どかどかとまたひとりパティシェリにはおよそ似つかわしくないような、こちらも白石ほどではないががっしり系の男が入ってきた。
「辻さん!」
呼ばれた男は良太を見ると破顔した。
「お、良太ちゃんやないか。奇遇」
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
