俺が工藤と付き合ってるのであれば、いくらでも、このオヤジと恋人同士でーすとかって言ったってかまわないさ。
でも違うんだ。
「あ、俺、後で買出し行ってきますよ。杉田さん、必要なもの書きだしといてください」
良太はまたぐるぐるしかかった厄介ごとを振り払うように、杉田に言った。
「カメヤ行くんなら、お願いしたいものがあるわ。今夜のお食事は外でしわたね、ぼっちゃん」
途端、工藤は渋い顔で「ええ」とだけ答えた。
ぼっちゃんはやめろと何度杉田に言っても暖簾に腕押しなので、最近工藤は顔を顰めるだけだ。
「俺が車出す。十一時だな」
工藤が大時計を見ながら言った。
「はい、わかりました」
「お昼はおそうめんですからね。一時くらいには戻ってらっしゃるでしょ?」
杉田に念を押されて「そのくらいには戻りますよ」と工藤は返した。
「ごちそうさまでした」
良太は食器をシンクに持っていくと、「ちょっと平さんのとこ、行ってきます」とキッチンのドアから外に出た。
「明日の綾小路さんとこへの土産、選びたいのかな」
前回参加した綾小路の夏のパーティは財界の重鎮やセレブがわんさか集まりとんでもなく大々的で、良太は工藤に言われてわざわざスーツまで新調させられた。
お蔭で大企業の重役らと顔見知りになったりもしたが、その裏で起こりつつあった妙な事件を、千雪とその仲間たちと京助が解決しておまけに犯人を取り押さえて警察に突き出したりしていた。
「今年は何事もなく、終わってくれよな」
良太は独り言を呟きながら、畑に向かった。
「上々のできですね~」
吉川の声が聞こえた。
「こんにちは」
良太の声に吉川と平造が振り返った。
「良太ちゃん、見なよ、これ」
吉川が籠いっぱいの夏野菜を掲げて見せた。
フルーツトマトをはじめ、ズッキーニ、ルッコラ、ファーベやビーツなどが山盛りになっている。
「カラフルですね~」
それから良太が平造に、工藤が温泉にでも行ってくるようにと言っていたことを伝えると、「お前たちが東京に戻ったらな」と言う。
頑固だが心優しい老人は黙々と作業を続けた。
「いつまでいるって?」
吉川が聞いた。
「明後日戻る予定です」
「じゃあ、うちでランチしてから帰りなよ」
「ぜひ」
夕方までに東京に戻ればいいだろう。
良太はそんなことを思いながら屋敷に向かった。
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