今朝割と早めに目が覚めた良太は、昨夜あのまま眠ってしまったのだと気づいた。
シャワーを浴びて窓を開けると、少し風が入ってきた。
「夏でよかった~」
半袖のシャツにゆったり目のカーゴパンツを数着着まわしているが、これがスーツだったら皺になっていたところだ。
工藤の部屋のドアをノックすると、「良太か」と言う声が聞こえたので、良太はドアを開けた。
「おはようございます」
シャワーを浴びたところらしく、タオルを腰に巻いて髪が濡れていた。
「朝ごはんできたので降りて来てくださいって、杉田さんが」
「平造は?」
「畑だそうです」
「休みを取って墓参りにでも行ってこいって言ったんだが」
「今まだ混んでるからじゃないですか」
「だったら、温泉にでも行けばいい。石原温泉なら平造のことをいつ行ってもいいように頼んであるんだ」
工藤は以前ぎっくり腰をやったりした平造のことを心配しているのだが、平造はわかっていてもいろいろやることがあるらしい。
「あとで平さんに言ってみますよ。じゃ、早く降りて来てください」
良太はそう声をかけてダイニングに向かった。
「平造さんが今朝採れたフルーツトマト持ってきてくれたのよ。私も一つ頂いちゃったわ。すごく美味しいのよ」
セロリやカブ、ズッキーニなどとフルーツトマトに、オリーブオイル、黒コショウ、バジル、レモン汁がかかったさっぱりとしたサラダは見た目も鮮やかで暑い夏でも食欲をそそる。
パンを焼いて皿にのせたところへ、工藤が降りてきた。
健啖ぶりを発揮してパクパクと平らげていく良太の向かいで、工藤はパゲットを一つ、オムレツは三分の一ほど食べて、サラダをつつき、コーヒーを飲みつつ新聞に手を伸ばした。
その時良太の携帯が鳴った。
「おはようございます。え、もう予約できたんですか?」
万里子からで、昨日話していた式場や披露宴をやるホテルの予約が取れたという。
「ああ、わかりました。データを渡しますから、招待される方にチェックして戻してくだされば。え、打ち出しの方がいいですか? 用意しておきます」
電話を切ると、「もう、式場とか予約取れたみたいですよ。万里子さん、すごい行動派なんですね。昨日思いついたのに」と良太が言うと、工藤は新聞から目を上げた。
「あいつ、本気で会社中の人間招待する気か」
「いいじゃないですか、賑やかで」
「妹さんも結婚するって言ってたな」
「亜弓はまだ先で来年のいつになるかも、まだ全然決めてないみたいですよ」
万里子さんは式を挙げるだけとしても、今年かおりらが結婚したと思ったら、亜弓も来年とか、続くなあ。
「決まったら知らせろ」
「わかりました」
平造だけでなく、良太の家族にも工藤が気を使ってくれているのはよくわかっている。
そういえば、相手の本宮さんの弟はパートナーと式に出席するらしい。
両親にも本宮の弟がゲイだと話したというが、案の定、いろいろとご苦労なさったのね、というのが百合子の反応で、まあ、好きになっちまったら、関係ないってことさね、というのが父親の反応だったと、わざわざ亜弓が良太に知らせてきた。
「お兄ちゃんも言っちゃっても平気じゃない?」
亜弓なりに良太のことを心配してくれているのだろうが、良太としては適当にはぐらかすしかなかった。
だから、違うんだって、論点が。
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