「ええ、クライムサスペンス。何だか、千雪さんの映画に出てから、割とそっち系多いかも」
工藤と万里子、井上が映画の話を始めたので、良太は立ち上がった。
「じゃ、俺、猫たちのようす見てきます」
猫たちがいる小部屋は、ちゃんとエアコンが入っているし、平造がキャットタワーまで設置しておいてくれたお陰で、慣れない場所ながら猫も割と馴染んでいた。
良太が顔を覗かせると、ナータンもチビもわらわらと寄ってきた。
「よしよし、いい子にしてたか?」
おやつのちゅーるを見せると、ふたつとも夢中になって舐め始めた。
猫たちは人慣れしているからか、初めての別荘でもあまり怖がるようすもないが、車の移動などはやはり苦手なようで、工藤のベンツの後部座席に乗せてきたのだが、よく鳴いた。
良太は今にも工藤が怒鳴りつけるのではないかと思ったが、案外、怒ってはいたろうが口には出さず、とにかく突っ走ってきた。
この小部屋は階段を上がってすぐまた五段ほど上がったところ、二、五階といったところにあって、約四畳ほど。
平造の話では、昔は使用人部屋だったらしいというが、今現在は何も使われておらず、物置になっていたのを平造が片付けてくれたようだ。
「ここにベッド置いてくれれば、俺ここで寝てもいいのに」
ブツブツいいながら、良太はトイレの掃除をしたり、水を取り替えたりした。
しばしボールを転がして猫たちを遊ばせていたが、知らず知らず船をこぎ始めた良太は、ナータンが耳元でにゃーと鳴いたのにはっと気づくと、夜食にカリカリを少しずつ器に置いて、自分の部屋に戻った。
ベッドに腰を下ろした途端猛烈な眠気に襲われて、良太はそのまま眠ってしまった。
「あれ、おはようございます」
翌日、良太がリビングに降りていくと、エプロン姿の杉田がいた。
「おはようございます。平さん、ずっと働きづめだったから、今日は私がお食事用意しますね」
「え、すみません、何かお手伝いしましょうか?」
良太の申し出に杉田は笑い、「いいのよ、慣れないことしなくても」とキッチンに入っていく。
「お皿くらい運びます」
キッチンの作業台の上には既に、オムレツと夏野菜のサラダが二人分出来上がっていた。
「平さん、どこか行ったんですか?」
良太はオムレツの皿を手に杉田に聞いた。
「今朝早くから、吉川さんと畑に行ってるわ」
カンパネッラのオーナーシェフ吉川と平造は、互いに意見を交換しながら野菜作りをしている。
工藤家の庭の端にあるちょっとした菜園に平造は丹精込めているが、一端を借りて吉川も自分の店で使う野菜などを作っている。
「二人とも探求心旺盛ですね」
「ほんと。今日はいろいろ収穫がありそうよ。でもお陰で美味しいものをいただけるから、私たちは有難いわよね」
「ですね」
杉田は以前は家政婦紹介所に所属していたのだが、最近は年齢もあり、紹介所をやめてこの別荘の仕事だけ受けるようになった。
「ぼっちゃん、そろそろ起こしてきてちょうだい」
杉田の、工藤に対するぼっちゃん呼ばわりは、依然変わらないので、それを聞くと良太はついついにやけてしまう。
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