Summer Break20

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 スパゲティのミートソースも市販のものではなく、平造の手作りで、それがまた美味かった。
 そのあたりのことは、しっかり工藤の記憶にある。
 良太が聞いたら、絶対面白がるに決まっているので、それは口にはしないつもりだが。
 と、ポケットで携帯が鳴った。
「千雪と?」
 良太からで、千雪から連絡があって、ちょっと会ってくるという。
「ああ、別に急がなくていいぞ」
 食事の約束に五時くらいに戻ればいいかという良太に、工藤は答えた。
 仕事の話だろうと、工藤は気に留めることもなかったのだが。
 
 
 

 待ち合わせたカフェまで歩いて五分ほど、良太がアイスコーヒーを飲みながらガラスの向こうに目をやると、GLBが駐車スペースに停まった。
 助手席から降り立った千雪が良太を見つけて手で合図した。
 店を出ると、車のドアが開いて、良太は運転している京助の後ろに乗り込んだ。
「どこ行くんです?」
「すぐそこのコテージ」
 良太の問いに千雪が答えた。
 ゆっくり猫たちと遊ぶか、と小部屋に入ったところで千雪から呼び出しがかかった。
「ちょっと話あるねんけど」
 猫の手軍団もいるし、何だか胡散臭いと思いつつ、良太は指定されたカフェで千雪を待っていた。
 胡散臭くなければ、どうせ車ならわざわざカフェで待ち合わせなくても別荘まで来てくれればいい話だ。
 車は大きなコテージの前で止まった。
 ガラスがふんだんに使われた明るいまだ新しいコテージだ。
 靴はそのままでいいという千雪について中に入っていくと、広いリビングに猫の手軍団が勢ぞろいしていた。
「おう、良太ちゃん」
 辻が笑みを浮かべた。
「コーヒー飲む?」
 カップを持った白石が聞いた。
「あ、いえ、今飲んだばかりなんで結構です」
 遠慮する良太に、「まあ、座ったら?」と千雪がソファに促した。
 良太が千雪の向いに座ると、傍らでノートパソコンを覗き込んでいた加藤も顔を上げた。
「それで? 何企んでるんです?」
 良太が切り出すと、「企むやなんて人聞きの悪い。単刀直入に言うとや、明日のパーティに備えてちょっと大掃除しとったんや」と千雪が言った。
「大掃除?」
 ますます胡乱な目で良太は千雪を見た。
「一週間ほど前、例年軽井沢で行われている東洋グループ主催の財界やセレブを招いてのパーティで、セレブだかセレブもどきだかの間でコカインの売買が行われるらしいという情報が入った。その情報をもとにパーティの前に売人を突き止めて売買をやめさせた」
 千雪の代わりに加藤が簡潔明瞭に答えた。
「コカイン? 売買?! って、犯罪じゃないですか! 情報って、やめさせたってどういうことですか?」
 加藤の説明を聞くなり、良太は声高に突っかかった。
「警視庁捜査一課の渋谷さん経由で、売人を引き渡したんです」
 加藤はこともなげに言った。
「そ、うですか、それで一件落着なんですよね?」
 何か嫌な予感がして、良太は尋ねた。
「それが、一網打尽てわけにいかんかって。どうやらパーティに出席予定の某女優とどこぞの御曹司が別ルートでコカイン手に入れるいう話が、これまた別ルートの情報でわかってな」
 今度は千雪が答えた。

 


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