「俺、海老原さんはどうしても好きになれないんですけど、美亜さんは犬猫の保護活動をしている団体に所属していて、すごい熱心に活動してるみたいで」
動物の話になるとどうしても保護ネコや保護犬たちに辿り着く。
海老原は以前ドラマの撮影で利用したバーのオーナーだが、良太にしてみれば、人間的に難あり、で、あまり関わり合いたくない部類に入る。
「小笠原は美亜と続いているのか?」
工藤が思い出したように聞いた。
「そうなんですよ、あのおチャラけてた小笠原とは別人みたいに仕事もプライベートも、最近、真面目だし、美亜さんのお陰ですね」
工藤はフンっと鼻で嗤う。
それにしても美亜はあの海老原の妹とは思えない、好感の持てる存在だ。
「そういえば、小夜子さんも最近、保護活動に参加してるって千雪さんが言ってました」
「小夜子さんが? 大和屋の仕事もあるし、ただでさえ忙しいだろう。そんな暇あるのか」
東洋グループ次期CEOと目される東洋商事社長綾小路紫紀の奥方である小夜子は、千雪の従姉で、姓は変わったが、日本橋にある老舗呉服問屋大和屋の一人娘で、結婚後も実家の会社ではぱっと見のほんわかな雰囲気を裏切って広報部長として活躍している。
「そうですよね。でも大さんも巻き込んで、頑張ってるって話です」
「フーン」
「だから屋敷にも、猫や犬が増えたみたいですよ。まあ、あのうちは広いから、犬猫にとっては過ごしやすいかもですが、世話が大変ですよね」
案の定、執事の藤原親子をはじめ、それぞれ担当の犬猫があるのだと、千雪は話していた。
「そういえば今回、平さんが猫たちに貸してくれた部屋、すごい快適みたいで、ずっとこのうちにいたみたいな顔で猫たちくつろいでますよ」
ナータンは良太が大学の時から飼っている猫だが、チビは以前千雪がゴミ収集所で見つけた数匹の子猫のうちの一匹だが、まるで親子のように仲がいい。
工藤は嬉々として語る良太の顔を見ながら、こんな日もたまにはいいか、などと心の中で思ってみる。
工藤にしては珍しく、携帯の電源を切っていた。
でないと休みだろうが何だろうが、何だかだと仕事関連の電話が入ってくる。
『佐久』を出ると、別荘への道をのんびりと歩く。
連日の猛暑日とはいえ、このあたりは夜になれば気温が少し下がるし、夜風が少し涼し気になってきている。
別荘に戻ると、猫たちの部屋に向かう良太に「あとで部屋に来いよ」と工藤が言った。
「はいっ!」
ほろ酔いの良太は威勢よく返事をして、階段を上がっていった。
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