今年も綾小路家の夏のパーティでは、目一杯着飾った女性と男性もドレスアップしたスーツに身を包んだ五百人からの招待客が入れ代わり立ち代わりホールにひしめいていた。
エントランスを入ってすぐの広いホールがあり、その続きのリビングからは、スキー合宿の時は置かれていたソファセットなどの家具が壁際に移動し、一つの大ホールと化している。
奥のテーブルには一流のレストランから派遣されたスタッフの手による料理が並び、バイキング形式で招待客は各々皿を手にとり、高級食材をふんだんに使ったメニューを堪能していた。
棚には滅多に口にできないような銘柄の酒のボトルが置かれたバーカウンターでは、これも老舗のバーのオーナーバーテンダーが出張し、客人に好みの飲み物を提供しており、数名のスタッフが高級シャンパンやワインなどを手にしたトレーに乗せてホールを回っている。
工藤と良太はパーティが始まって十五分ほど経った頃、車で屋敷内に入った。
工藤が運転していたが、帰りはアルコールは口にしない良太が運転するつもりだ。
「車を屋敷に置いていって構いませんよ。タクシーを呼びますから」
出迎えた東洋商事社長綾小路紫紀が、良太にこそっと耳打ちしてくれたが、良太としては千雪とのことで酒を飲まない事情があった。
当主は東洋グループ会長綾小路大長だが、今や次期CEOと目される長男の紫紀が、夫人の小夜子とともにパーティの中心であることは間違いない。
特に飾り立てることもないのに滲み出るような美しさとオーラを纏った小夜子は、財界のみならずよく知られたセレブの一人だ。
小夜子自身も実家で古くから続く呉服問屋大和屋の次期社長となることが先頃決まった。
その大ホールには、猫の手軍団の加藤の指示で、人にはわからないようにカメラが設置されていた。
ホールだけでなく、屋敷の要所要所にも仕掛けてあるが、京助の進言で、前回パーティを利用して車の窃盗が行われたこともあり、何か起こってからでは遅いという理由で紫紀に承諾を得ている。
ただ、実際薬の売買が行われるかも知れない云々は伏せてあった。
「あら、よく似合ってるわよ、そのタイ」
早速良太に声をかけてきたのは、華道五所乃尾流家元の娘、理香だった。
「あ、お久しぶりです。番組、好評でしたよ」
「ありがとう。良太ちゃんのお陰で株があがったわ」
理香には、良太がプロデューサーとして名を連ねるドキュメンタリー番組に出演してもらったのだが、現在は世界で活躍する華道家でもあり、京助の悪友の一人でスキー合宿の常連でもある。
高慢で歯に衣着せぬ物言いのせいで女性にはあまり人気はないが、一度アメリカの資産家と結婚したもののほどなくして離婚、以来悪の強い美貌も手伝って恋人には困らない。
「工藤さんは?」
「今、紫紀さんと話中です」
ただし、理香は工藤がドストライクらしく、工藤に近づきたがっているのが、良太にはちょっと気になるところだ。
おそらく工藤からしてみればタイプではないだろうとは思うが、工藤が付き合ってきた相手はバリキャリの美人が多い。
ただし、今はそういう相手はいないとは思うのだが。
昨夜は一週間ぶりくらいに工藤とベッドで過ごした。
言葉も少なくただ愛し合い、今朝は平造の朝食を知らせる電話で目を覚ますまで、良太は工藤の傍らにいた。
たまに本当の恋人みたいじゃんと良太に思わせるようなこともある。
この時間になっても昨夜の余韻が身体に残っている気がして、良太は一人顔を赤らめた。
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