Summer Break26

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「金持ちのドラ息子がほぼわかった」
 その時、インカムに加藤の声が入った。
「関東エレクトリックの社長の次男田岡郁也と石川ホールディングスCEOの一人息子石川大夢のうちのどっちか、或いは二人ともがターゲットらしい」
 関東エレクトリックは製造機器メーカーの大手、石川ホールディングスは医薬品の大手だ。
 どちらも日本の産業を支える大企業である。
「この二人、先月のどっかのセレブのパーティでラリってたって話で、こいつらに売人と繋がってる女優陣の誰かが接触するらしいって情報」
 良太は素早くその二人の御曹司を目で探した。
 こいつらを監視しとくってことか。
 田岡はどこぞの財界人らしき年配の男らといかにも御曹司といった顔で談笑している。
 石川も若手の男女と話しているのに気付いたが、その顔を見て良太ははっとした。
 朝日産業の取締役で関西タイガースの沢村の兄、宗一郎夫妻だった。
 そういえば、綾小路家の初釜にもこの二人は顔を出していたし、財界のトップ企業として綾小路家とは何かと行き来があるのだろうと良太は推測するが、昨年末の沢村の厄介ごとを思い出さずにはいられず、あまり見たくもないという感情が良太の顔を曇らせる。
「あ、良太ちゃん! 久しぶり!」
 明るい声に顔を上げた良太は、そこに三友フィナンシャル頭取の娘友田彩佳が立っていた。
 品のいい夏のワンピースがよく似合う友田は、前回のこのパーティで会い、スキー合宿にも一緒に参加した明るい女性だ。
「お久しぶりです! 髪型変わりましたね」
「ああ、やっと気づいてくれた! さすが良太ちゃん。だれも気付いてくれないんだよ?」
 理香とも親しい友田はだが、ただ頭取の娘というわけではない。
 高校からアメリカに留学し、スタンフォード大学を卒業後、ウォール街の金融機関で研鑽を積み、近年帰国して三友銀行本社に入社したキャリア組だ。
 田岡や石川ら、どう見てもドラ息子な連中とは一線を画すだろう、友田と一緒に良太に声をかけてきたのは住吉建設の常務の高橋、川村物産の広報部長川村、京浜ホールディングス営業部浜村である。
 友田と一緒に前回のパーティにも出席していたこのグループは仲がいいだけでなく、それぞれの会社で実力を認められたメンツらしい。
 なのにえらぶったところもなく、気さくで話も面白い。
「でもまさか沢村選手とマブダチなんてすごい!」
 急に友田が沢村の名前を出したので、良太はうっと言葉を飲み込んだ。
 沢村の兄夫妻もいることもあり、良太としてはあまりここでは話題にしたくはなかったのだ。
「え、ほんとか?」
 だが川村までがくいついてきた。
「初釜にも来てたよね? てっきり番組とかの知り合いだと思ったら、幼馴染なんだって」
 友田がわがことのように言う。
「いや、リトルリーグからの悪友ってか、大学でも一応対戦したこともあったってくらいで」
「え、良太、野球やってたのか? T大で? すごいな」
 まともに感心されて、良太は苦笑いした。
「ま、ほらT大だから」

 


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