秋山にしてももほとほと自分の親に嫌気がさしているようで、工藤と似たり寄ったりなのかも知れない。
沢村も家とは縁を切ったとか言っているらしいし、幸せな家族の方が今は少ないのだろうか。
ただ、良太の一家をみるたび、まるで一昔前のホームドラマに出てきそうな親子だと思う。
あんな両親のもとで育つと、良太のような表裏がないまっすぐな子供になるのかもしれない。
工藤はそんなことに思いを巡らせて苦笑した。
「あ!」
その時良太はホールを出ていこうとする二人に気づいて思わず声を上げた。
「なんだ?」
怪訝そうに工藤は良太を見やる。
「あ、いえ、何でも……」
「おい、お前、さっきからきょどって、何を隠してる?」
「へ、いえ、何も隠してなんて………」
良太は工藤に険しい目つきで迫られて作り笑いでごまかそうとする。
実はホールを出ていこうとしていたのは榊裕奈と田岡だった。
良太が声を出した直後、「榊裕奈と田岡はこっちで追う」と耳の中で加藤の声がした。
「俺の目をごまかそうとか百年早い! また千雪らと何か企んでるんだろう」
「ごまかすとか、そんな滅相もない」
工藤に凄まれたら大抵ビビッて逃げ去るところだが、良太には日常過ぎて今更ビビることもない。
「千雪くんが、どうかしましたか?」
しばらく小夜子と何人かの招待客と談笑していた紫紀だが、また定位置のように工藤のところに戻ってきて尋ねた。
「ああ、今日はどこにいらっしゃるんだろうと」
工藤に代わって良太が答えた。
「そうなんですよ。私も探してるんだが、京助の姿も見当たらない」
それを聞くと工藤は益々怪しんだが、「あ、俺、飲み物もらってきます」と良太はそそくさとその場を離れた。
あのやろう!
工藤は紫紀の手前、怒鳴ることもできず良太の後姿を睨みつけた。
もともと自分から交友関係を広げようなどと毛ほども思っていない工藤は、工藤を見つけて挨拶してくる者には言葉を返すものの、相手が紫紀あたりなら動きもするが、知った顔があってもわざわざ自分から出向くことはほとんどない。
そういうところが、偉そうに、と反感を買うことも少なくないが、工藤は一向に気にしない。
だから、紫紀と最初に話した場所でホールを見ているような顔で、仕事のことを考えたりしている。
だが今は、良太がこそこそ何やら千雪らとやっているらしいことがわかってきて、ホール中に目を走らせた。
「どうやら千雪くんと京助、何か企んでるようですね」
紫紀も気づいているようで、工藤にだけ聞こえるようにそんなことを口にした。
「良太も一枚かんでいるようです」
苦々しい口調で工藤は返した。
「セキュリティには極力気をつけているのですが、いつぞやのようなことがありましたからね」
「いや、これだけの人が出入りすると、なかなか」
「招待客も一応チェックしていますが、故意に何かを隠されているとこちらとしても手が及びません」
紫紀にもそういったところは懸念材料らしい。
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