「やっぱ、お迎えの車って、サイレン付きだったんですか?」
良太はつい、思っていたことを口にした。
「サイレンは鳴らさんと帰ってもろたけどな」
「詳しいことはまた後で話す。腹が減った」
動きたくないという顔の千雪の横で、京助はそういうと、「まだ何か残ってるのか?」と言いながら料理のテーブルの方へたったか歩いて行った。
「加藤さんらは?」
良太は千雪にたずねた。
「こっち誘ってんけど、気楽にホテルで飲みたいいうて、みんな帰ってしもた」
「なるほど、あ、これ、返さないと」
良太ははたと耳の中に入れていたインカムを取り出した。
「ああそれ、良太持っとけばええ」
「はあ……。それって、今後何かあったらまた出動せよという」
すると千雪ははははと笑ってごまかした。
「おい、お前ら、またこそこそと危ない真似をしてるんじゃないだろうな?」
二人の会話を聞きつけて、工藤が文句を言った。
「危ないことなんかしてまへんて。ホール内は山倉しかいてへんかったから、良太には実況中継やってもろただけですわ」
千雪がしれっと答えた。
工藤もさり気に目で追っていたので、京助が橋田を伴ってホールを出て行き、左手の奥の方では山倉が石川を出口へと案内するのに気付いていた。
おそらく屋敷の外では警察が待っていたのだろう。
「また藤原さんが、連れていかれた彼らのことで、チェックが足りなかったとか何とか気に病みそうだから、京助にうまくとりなすように言っておいてよね、千雪くん」
紫紀もかすかに一つため息をついた。
「そこは京助のことですよって、任せといてええ思いますよ」
そういう千雪の言葉からは、京助に対する信頼感がはっきり伺えるのだが、と良太はてんこ盛りの皿を二つ手にした京助が戻ってくるのを見ながら思った。
「しかしほんと事実は小説よりっていうけど、千雪くん、今日の捕り物とか、そのまま小説のネタになるんじゃないの?」
からかうともなく紫紀が千雪に尋ねた。
「はあ、どっちか言うたら小説よりドラマネタやないかなあ」
すると紫紀は俄然目を輝かせて、「ドラマといえば、コリドー通りで、面白かったですよ。いかがです? このネタ使って、コリドー通りの続編とか」などと言い出した。
「俳優や財界人や若手プロデューサーとか出てきたり」
紫紀の発言に、良太はぎょっとする。
ちょ、まて!
若手プロデューサーとかって、俺かい?
「先走らないでくださいよ。コリドー通りはあのめんどくさい坂口先生ですからね、続編なんかやるかどうか」
工藤は苦笑しながら軽く紫紀をたしなめる。
「でも、視聴率、個人もよかったみたいじゃないですか。評判もよかったし、何しろあの凸凹バディがよかったですよね」
「はあ、その宇都宮がスケジュール詰まってますからね」
「うーん、難しいですかね」
嬉々として自分の思い付きを話す紫紀は、大きな企業のトップとは思えない無邪気さを醸し出していた。
いやいや、企業のトップだからこそ、遊び心で何でもやってしまえると勘違いするんだ、あの鴻池みたいに。
良太は未だに好きになれない鴻池を思い出してちょっと嫌な気分になった。
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