Summer Break37

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「初犯で執行猶予も終わってほとぼりが冷めた頃でも、いざ復帰となると、視聴者が金輪際許さないとばかりダメ出しするんで、スポンサーもうんとは言わない。せっかく実力のあるやつらがバカをやって這い上がれなくなる」
 工藤が怒りを滲ませた口調で言った。
「あ、でも、何年か前にやっぱりクスリで捕まった俳優の伊坂省吾さん、ネットプライムのドラマで今人気ですよね」
 良太は配信会社のドラマに活躍の場を見出したベテラン俳優の名前を挙げた。
「スポンサーの顔色を窺わなくてもいい配信会社なら、実力があれば使うだろうが」
「せえけど、それを逆手に取って、捕まってもその手があるとか、犯罪や法を軽んじるもんが出てきいひんとも限らん」
 工藤が言うのに対して、千雪がきっぱりと口を挟む。
「クスリは確実に人間を壊す。手を出す奴らは甘いんだよ」
 さらに強い口調で京助が言った。
「でも、刑期を終えて罪を償った人を叩き過ぎって気もするけど」
 良太は常々思っていたことを口にする。
「お前は甘いんだよ」
 工藤が苦笑する。
「だけど、ネットなんかの匿名性を利用して、リンチ染みた攻撃も目に付くし」
 良太は工藤に言い返す。
「だからつまらん連中にいつも騙されるんだ、お前は」
「いつ、俺が、どんな連中に騙されたよ?」
 良太は工藤に食って掛かった。
「まあまあ工藤さんは良太ちゃんのことが心配なんでしょ」
 笑いながら紫紀が二人の間に割って入った。
「良太ちゃんは優しいのよね」
「優しいからつけ入れられるいうこともあるわな」
 ふんわりと笑顔を向ける小夜子の言葉を受けて千雪がぼそりと言った。
「俺やったら、早々に悪やて気ぃついて警察にぶち込ませとるところを、良太はクロやて納得するまでシロや言い張るんや」
「は? クロって決まるまではシロでしょうが」
 良太は千雪にも反論する。
「シミは広がる前に消すのんがええ」
 冷酷そうな言葉を千雪は平然と使う。
「クスリを軽うみとる連中は、さらに凶悪なんが出回った時には呆気のう消えるで。シミに慈悲は必要ない」
「千雪さんてきっつう!」
 良太が感心するほど千雪は容赦ない。
「いや、ネットでフェンタニル入りキャンディなんぞバラまかれた日には、モルグが消化不良起こしちまう」
 京助のリアルな発言に、良太は眉を顰める。
 だが、クスリも犯罪もエスカレートしていくことは十分あり得ることかも知れない。
「とりあえず君たちは犯罪の芽を一つは摘み取ったわけだね」
 紫紀はゆったりとソファに凭れて紅茶を飲んだ。
「まあ、次が現れるのは必須だろうけど、その時はその時ってことで、少し頭を休めよう」
 場を納めるように紫紀が言い、「そうそう、今度ドラマ化される小説は社会派で硬い内容みたいだね。悪党にはきつい主人公なんだって?」と千雪を見た。
「ああ、まあ」
 途端に千雪の表情が曇る。
 例によって工藤がとっととお膳立てしたドラマ化の話を千雪は渋っていた。
「でもひとみさん、めちゃ張り切ってますよ」
 良太が主人公の検事をやることになった山内ひとみの話を持ち出すと、一気にドラマの話で盛り上がった。

 


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