「まあ、良太ちゃん、あんまりお酒強くないんだから、無理して飲んじゃだめよ」
鈴木さんにも窘められて、「はい」と苦笑いする。
本当のところなど口にできたものではない。
良太をヨレヨレにさせた張本人は、早々に出かけて行った。
昨夜話に出た愚にもつかない君塚の上司が予算をケチったために、工藤は新たなスポンサーを探す必要があると君塚らと話していた。
あたりをつけている企業に十時にアポを取っていたらしく、新調したスーツで颯爽と出て行く工藤を良太はベッドの上で見送ったのだ。
ちぇ、自分ばっかカッコよく出かけちゃってさ。
良太はボソッと心の中で零す。
にしても、ニューヨーク行きがほんとだとすると、いろいろ準備とかあちこちと不在の三か月の間のことを話しを通さなくちゃいけないし、めっちゃやることあるぞ。
まさか良太の方が沢村より先にニューヨーク行きが決まるとか、思ってもみなかった。
そうだ、向こうで住む部屋とかも探さなくちゃいけないし、ドキュメンタリーもドラマもあるのに、クッソ、何からやったらいいんだ。
「大丈夫です? 良太さん」
あれやこれや考えてちょっとパニクっていた良太に、モニターから顔をあげて森村が声をかけた。
「あ、ああ、大丈夫だから、ごめん」
胡散臭い態度を取ってるとみんなに迷惑をかけると、良太はしゃきっとしなくてはと自分に言い聞かせる。
とその時、携帯が鳴った。
「千雪さん?」
電話に出ると、「今夜とか、時間ある?」と千雪が聞いてきた。
「今夜、ですか、えっとスタジオがあるけど、何か?」
「例の話、ちょっと二人で作戦会議、やりたいね。何時でもええけど、俺の部屋来られる?」
例の話、と言われてややあって、沢村と佐々木のことかと良太は思い出す。
自分に降って湧いたニューヨーク研修で頭がいっぱいなのだが、と思いつつも「八時までには伺えると思います」と良太は答えた。
「ほな、ご飯、うちで食べたらええし、待ってるわ」
電話が切れてから、「後片付けまで俺いますから、良太さん、先に出てください」と良太の電話を聞いていたらしい森村が言った。
「悪いな。そうさせてもらう」
「じゃ、俺も車で行きますから」
良太が不在でも、森村がいれば何とかなるかも知れない。
最近の森村は良太の横でいろいろなことを吸収して、頼もしくなった気がする。
でも俺のいない時に、工藤に何かあったら?
大きな不安要素がいきなり良太の頭を占領した。
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