月澄む空に130

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 良太を離してやろう成長させてやろうなどと思いつつも、自分の手の中に置いておきたい欲がそれをさせてやらなかったのだ。
 だがここにきて紫紀からプロジェクトに良太をという話を聞いた時、いよいよきたのだと、工藤は思った。
 ネットプライムが契機となり良太は一気に飛躍する。
 そして良太は俺の手を離れて行くかも知れない。
 時は人は変わっていくのだと言ったのは俺だ。
 だが、良太を離したくはない。
 工藤の中で蠢く葛藤がひどく喧しい。
「あ、やっ……!」
 良太の腰を掴み工藤が己を押し入れると、良太が色めいた声を上げた。
 溶け出した良太の身体は従順に工藤を呑み込み、やがて高みへと押し上げられた身体はひどく戦慄いた。
 良太の蕩け切った身体は工藤が離れようとすると嫌がるように泣いた。
 意識が白濁する前の良太の記憶はそのあたりまでで途切れた。
 

 
 

 プロ野球のペナントレースが終盤を迎え、セリーグは関西タイガースと東京スワローズが一位と二位で勝敗が付きそうな様子を見せてきた終末の土曜日、前々から約束されていた鍋パーティが宇都宮俊治宅で開催となった。
「今年は賑やかだねえ」
 例によってすっかり鍋の用意を済ませた宇都宮が、客人たちを出迎えた。
「わあ、ひろーい!」
 竹野が声をあげる。
「すごーい! 夜景!」
 一面ガラス張りのリビングは、いつもながらモデルハウスのように整然としていた。
「相変わらず何にもないのね~」
 ひとみが歯に衣着せぬ物言いで何十畳かのリビングを眺めた。
「お一人で住んでるんですか?」
 天野はひとみや須永、森村とスタジオから直行した。
「一人だよ。一緒に住んでくれる相手もいないからなあ」
 キッチンミトンで大きな鍋を運んできた宇都宮が言った。
 その後ろから森村と須永が材料が乗った大皿を掲げてやってくる。
「すみません、俺も手伝います」
 慌てて天野がキッチンに向かう。
 冷蔵庫やオーブン、食洗機などがスタイリッシュに収まったシステムキッチンはアイランド式で広い。
 調理台の上には魚介類が乗った大皿が一つ置いてあったので、天野はそれをリビングへ持って行く。
 宇都宮が食器を取り出している頃、インターホンが鳴った。
 森村がロックを解除すると、やがて息を切らして良太が現れた。
「すみません、遅くなって」
 良太の顔を見ると宇都宮がにっこり笑う。
「お疲れ様。久しぶりな気がする!」
「はい、お久しぶりです。今、プロ野球が大詰めで」
「沢村選手、ホームラン打ったね!」
「ええ。これでおそらくホームラン王間違いないかと」
 それは良太にとっても嬉しいことだった。
 MLBに行くためにも、三冠王のタイトルは大きい土産になるはずだ。
 プロ野球ファンは、特にタイガースファンからは文句の一つも出るかもだが。

 


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