「パーティでも酒を飲むなとでも言うしかないな」
自分で口にしながら全く冗談ともいえないと工藤は思う。
「そうですね。女の子が使われているようなパーティでは特に。いや、最近は女の子だけに気を付けていればいいというものではないようですし」
淡々と波多野は続けた。
工藤は電話越しの相手を睨みつけるように、「適当な人材はいないのか。良太をガードできるような」と思わず凄んだ。
「もちろん、考えていますよ」
波多野はすかさず言った。
「良太に何かあったりしてあなたに無防御にニューヨークくんだりに飛ばれては困りますからね」
続けて波多野は、「四月には森村も渡米するそうですから、彼がいる間は徹底して良太くんをガードすると思いますが」と言う。
「森村は良太くんを慕ってますからね」
波多野は息子である森村に自分の仕事の手伝いをさせるつもりはないらしく、森村がやりたいようにやらせているが、良太をフォローしたい森村は必然的に良太をガードする役割も自発的に担っていることについては口を出すつもりはないらしい。
「良太くんにも気づかせることもないし、正体を告げるつもりはないですが、良太くんの周りをそれとなく探らせて、パーティや飲みの際は、ちゃんと良太くんをガードさせますから」
工藤は頷いたが、欲を言えば研修中も気にならないではない。
「わかってますよ。四月までには会社にも潜り込ませます」
工藤の考えを見透かすように、そこまで言われれば工藤もこれ以上何も言うことはできない。
良太に気持ちよく研修を受けさせたいと思う傍から、あれやこれや心配して、行き過ぎの過干渉な保護者のようだと工藤は自嘲する。
だが何か起きてからでは元も子もない。
「まだ飲みます?」
良太に言われて工藤ははたと我にかえった。
言葉より先に良太のスウエットの胸のあたりを掴むと、工藤は良太の唇を塞ぐ。
いきなりな展開だが、次第に深くなるキスに良太は息が上がる。
ようやく離されたと思うと、そのままソファに押し倒された。
何だか色々考えてしまったせいか、工藤の腕の強さを感じられることが嬉しくて、良太は工藤の背中に思い切り腕を回した。
こんな風に、いつまで工藤といられるのだろう。
思うだけ良太の中の熱を上げていく。
工藤の指や唇が肌を這い、とっくに頭を擡げている良太に少し触れただけで弾けた。
波多野が何と言おうと、工藤はこんな良太が可愛い。
本音を言えば、三か月もこいつに触らないでいられるほど枯れてはいない。
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