それでもこんな風にがっついてくるってことは、向こうで発散することもなかったはずだし。
ずるずると引き込まれてとまたしてもいつものパターンに持ち込まれ、良太は揺さぶられながら工藤が与える身体の奥底まで貫かれるような痛烈な甘い刺激に意識を失くした。
翌日のロケは夕方頃から現れた工藤が久々怒号を飛ばした。
「犯罪者を相手にお茶会でもやってるつもりか? 天野!」
初めてどやしつけられた天野もちょっと驚いたようだが、次にはきりりと腹から声を出した。
「ひとみ! もっと上から目線でいけ! いつものお前はどうした!」
「うるさいわよ! 高広!」
ひとみとの掛け合いも健在だ。
工藤の登場で、ピリリと緊張感が走り、現場が引き締まる。
「いやあ、やっぱ工藤さんの一声、効きますね」
休憩になると山根が工藤に言った。
「轢き逃げ以降、気になることはないか?」
険しい眼差しを向けられた山根は小首を傾げた。
「うーん、これといってないと思いますよ? 今のところ」
「俺に遺恨を持つやつの仕業かも知れない。すまないな、いろいろ気をつかわせて」
「いえ、逆に身が引き締まってますよ。でも、何か心当たりがあるんですか?」
山根も眉根を寄せて聞いてきた。
「まだ確証がないから下手なことは言えないが、もしかするとというヤツがいる」
「そうですか。いや、とにかく注意万端、目を光らせてますから」
「うちの関係者にも辺りを巡回させている。撮影の方は頼む」
「了解です!」
山根はちょっと拳を握って見せた。
良太は山根が工藤から離れると、歩み寄った。
「さっき谷川さんから、轢き逃げ犯、ほぼ須田紘一って男だろうって。武蔵野署にも連絡を入れたそうです」
「そうか」
「そいつ、小宮山さんと繋がりがあるってことも伝えたみたいで、小宮山さんに警察の目が向くかも知れません。ただ、小宮山さんと富田さんとの関係についてはまだ確証がないので、洗いざらい吐いてくれればいいんですけど。須田ってやつと富田さんと関係もわからないし」
谷川から連絡をもらったばかりの良太は、詰めまで行かないことで悔し気に言った。
「わかった。そっちは警察に任せて、お前は自分の仕事をしろ」
工藤はそっけなく言うと、これから紺野と合流して、向こうのロケへと向かった。
ちぇ、夕べは嫌ってほどしつこかったくせに、何だよ。
しばし良太の視線は工藤の背中を追っていた。
「良太さん、何か置いてかれた子犬見たいな顔」
いつの間にか傍に来ていた天野がこそっと耳打ちした。
「へ、天野さん。何ですか、それ」
良太はごまかしたが、仕事中に心の中がだだもれみたいな自分を見透かされたようで焦る。
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