二人はおススメのステーキやサラダとスパイシーオムレツやじゃがバター、ピザなどを頼み、生ビールで乾杯した。
「緊張の中で仕事するってのもいいと思うんだけど、その緊張が何か起きるかも知れないっていうヤツだと、なかなか息もつけないし、たまにガス抜きしないと」
天野にそんな風に言わせることが良太は申し訳ないと思った。
「すみません、俳優さんには撮影に集中していただきたいのに、事件のこととか気になりますよね。病院行きになった人もいたし、ライトが落っこちてきたりとか」
「良太さんが謝るようなことじゃないですよ。そういうことをやる人間が悪いんだから」
ムキになって言う天野に、良太は苦笑した。
「まあ、そうですよね」
天野はてきぱきとシーザーサラダとスパイシーオムレツ、それにじゃがバターを皿に取り分けて良太の前に置いた。
「ありがとうございます」
「ステーキはこのまま食べましょう」
これ、うまい、と言いながら天野はパクパクと小気味よく食べる。
良太もサラダを食べながら、武蔵野署では轢き逃げ犯を捕まえただろうかなどと考えていた。
「そういえば、話があるって」
「ああ、それ、実は」
天野はそう前置きすると、ちらっと辺りに目をやってから良太の方へ前のめりになって声を落とした。
「こないだ、雑誌の取材でスタジオの撮影があったんですが、終わって廊下に出た時、船岡さんが、あの人ってだけ言って口を噤んだんです。船岡さんが見ている方に目をやったら、アラフィフくらいの男がモデルっぽい女の子の肩を馴れ馴れしく抱いて歩いてたんだけど」
アラフィフの男? と良太も天野の方へ身を乗り出した。
「スタジオを出て車に戻ってから、船岡さんがそのアラフィフの男って、トミタエンタープライズ社長の富田さんだって」
「富田さん?」
良太は思わず聞き返した。
「昔はMBCでたまにいい仕事をやったこともあるんだが、辞めて自分の会社興してからはぱっとしないらしいし、轢き逃げにあった小宮山さんと最近つるんでるって話だが、あまりいい噂を聞かない、って、船岡さんが」
「小宮山さんとつるんでるって?」
「船岡さん、そういう話を聞いたって」
やはり、と良太は一瞬考え込んだ。
「ひょっとして、その富田ってやつが、黒幕じゃないかって、俺のカン」
天野はニヤッと笑って自分の頭を指でついた。
「え、ウソだろ」
その時、天野がある方向に目をやって、動作を止めた。
「どうしたんですか?」
「振り向かないで」
天野が見ている方向を見ようとした良太に、天野がすかさず言った。
「その、富田が、いる」
「え?」
天野の言葉に良太はドキリとした。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
