「実は、ここのところ、今画像に現れた富田という男が、人を使って詐欺まがいのことをやったり轢き逃げさせたりして、私が顧問をしている青山プロダクションの営業妨害をやらかして、こちらとしては確証を掴むまで泣き寝入りだったんですよ」
小田は穏やかに話した。
「つい先日轢き逃げ犯が捕まって富田とのことも吐露したみたいですし、ああ、武蔵野署の田島刑事に聞いてください」
「は、わかりました!」
警官の態度が一気に変わる。
「それと、吉崎ふみかさん」
いきなり小田にフルネームで呼ばれて、女は青くなった。
「君と富田のことも調べさせてもらいました」
しばし目を白黒させていた吉崎は、「あたしはただ、富田に頼まれただけよ! こいつをちょっと誑かして痴漢にでも仕立て上げてくれって!」とさらっと声を大にして暴露した。
「それと、俄か正義の味方の皆さん、どさくさに紛れて、彼を殴る蹴るとかしましたね? 傷害罪って知ってます?」
くるりと外野に向き直った新米弁護士の遠野は、数人の男を睨みつけた。
「うっそだろ?」
「その女が痴漢だっていうから!」
口々に屁理屈を吐く。
「例え容疑者でも、殴る蹴るやったら障害罪になるんです。示談でもいいですが、もちろん治療費は頂きます」
淡々と説明する遠野に、「ふっざけんなよ! 悪いのはその女だろ!」と一人の男が一歩前に出て遠野に挑んでくる。
「今の説明聞いていなかったんですか?」
良太を殴った連中までがもはや問答無用でブツクサ文句を口にしながら警察のお世話になることになってしまい、交番は一気に人口密度が上がった。
しかもそこへ武蔵野署の田島と伊藤が現れ、ざっと状況を確認すると「吉崎ふみかさん、ちょっとお話を伺いたいので、署までご同行願います」と吉崎を連れて行った。
良太も天野までが遠野の運転する車で小田とともに武蔵野署に出向くことになった。
「それにしても何かすごいタイミングで現れましたよね? 小田先生も」
しばらく車内は言葉がなかったが、まず良太が口を開いた。
「加藤さんから電話をもらってすぐ駆け付けたのでね。工藤は再三富田を何とかしろと電話で怒鳴るし、いい加減うんざりしていたところへ武蔵野署からもちょうど須田紘一が轢き逃げのことを白状したと連絡をもらったんです」
小田が説明した。
「それはよかった」
良太は心底ほっとした。
「ってか、あれ、盗撮ですよね? 特に富田と吉崎の会話とか」
「証拠能力はないかもですが、第三者がSNSに上げるとかした日には、明々白々に知らしめることになるし」
良太の問いに遠野が答えた。
「へ……、まあ、第三者ですか。それにしても、俺が吊るしあげられて連行されるまで撮った第三者って加藤さんでしょう? もっと早く助けてくれてもよかったのに」
よくよく考えて良太はむすっとした顔になる。
「まあまあ、確実に水戸黄門の印籠にしたかったんでしょう」
ちょっと苦笑いしながら遠野が言った。
「それより、良太さん、殴られたって、大丈夫ですか?」
今まで黙っていた天野が良太を心配して聞いた。
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