月澄む空に44

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「多分」
 良太はちょっと小首を傾げて答える。
 思い出すと痛む気がする。
「病院、行った方がよくないですか?」
「武蔵野署に行った後で、気になったら行きますよ」
「でも、頭とか後になって症状が出てくる場合もあるっていうし」
 良太の隣に座っている天野はまだ心配そうに良太を見た。
「それより、天野さんこそ、すみません、何か、俺のこと助けようとして、あんなことまで言っていただいて、それこそ、SNSとかに上げられたら」
 良太は肝心なことを思い出して、どう対処したものかと一気に心配になった。
 ところが天野は笑い、「SNSを賑わせてくれたら、番宣にもなっていいかも知れませんよ?」などとあっけらかんとしたものだ。
「ええ? そんな暢気な。船岡さんが聞いたら怒られるんじゃないですか?」
「ハハハ、船岡さんは人に迷惑を掛けない限りプライベートは干渉しないってスタンスですから、そんなことで怒ったりしませんよ」
 器が大きいのか、物事に動じないのか、天野は面白がっている風にみえる。
 おいおい、ほんとに大丈夫なのか?
 良太は一抹の不安を拭えないまま、首を捻った。
 いや、俺のせいで天野さんが変に取りざたされるようなことになったら、仮に船岡さんが干渉しなかったとしても事務所も黙ってはいないんじゃないのか?
 良太がそんなことで頭を一杯にしているうちに、遠野の運転する車は武蔵野署に着いた。
 四人が車を降りてすぐ、勢いよく大型のベンツが走り込んできた。
「一体どういうことだ?」
 車が停まるや降り立ったのは工藤だった。
「俺らに凄んでも仕方ないだろうが」
 恫喝するように四人を睨みつける工藤に、小田が言い返す。
「おい、殴られたんだろうが。お前は病院へ行け!」
 つかつかと良太に歩み寄り、工藤は良太の頭に手をやった。
「ちょっと小突かれただけですって。事情聴取終わったら行きますから」
 今夜は夜中まで紺野のドラマの撮影があるはずだが、工藤は小田の知らせを聞いて抜け出してきたのだろうと、良太は心中を察する。
 すると工藤は眉間に皺を寄せ、「殴ったヤロウはどうした?」と今あの男たちがここにいたらボコボコにしてやるくらいなようすで小田に向き直る。
「そっちは交番で聴取されてるはずだ」
「皆さん、中へどうぞ」
 まだ何か言おうとした工藤を遮るように、田島刑事が出てきてそう促した。
 工藤を筆頭に五人はぞろぞろと会議室に通された。
「ご足労頂いてすみません。ともかくご説明しますと、例のスナックの詐欺事件と先日の轢き逃げ事件ですが、大元は同じだったようです。加えて今夜の痴漢騒ぎも同様で、トミタエンタープライズ社長の富田という男が、小宮山や須田、それに吉崎を使ってやらせたということが今夜までに分かっています」
「それぞれ自白したんですか?」
 小田が尋ねた。
「はい。小宮山は最初は知らぬ存ぜぬを決め込んでいたようですが、須田が捕まって洗いざらい吐いたので、再度病院で小宮山を問い詰めたところ、吐きました」
「自白以外の証拠はあるんですか?」
 小田は続けた。
 


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