良太と同い年というが、なかなかどうして肝が据わっていて侮れない。
演技力も確かなようだが、人間的にも臈長けたところが垣間見える。
すると挑むような視線をようやく天野は外した。
こいつ、どういうつもりだ?
「もう、いいですか? 仕事を抜けだしてきているので」
工藤は苛つきを田島に向けた。
「何かあれば私が対応しますので」
小田が言った。
「いや、もうお帰りになって結構です。またお伺いすることがあるかも知れませんが、よろしくお願いいたします」
いつぞや工藤を容疑者呼ばわりした警視庁の刑事とは打って変わって丁寧な刑事だと、良太は密かに田島を見て思う。
「良太、帰るぞ」
「はい」
そこで、天野を置いていくわけにもいかないことに、工藤は気づいて、「天野さんも、送りますよ」とついでのように言った。
「ああ、俺はタクシー拾いますから、ご心配なく」
あくまでも自然体で天野は答えた。
三人一緒に署を出たところで、良太は天野を振り返った。
「天野さん、ここに来た時から記者らしき人が数人張ってますから、やっぱりお送りします」
「なるほど、ではお願いします」
良太の言葉に、天野はちらっと周りに目をやった。
あちらこちらに佇んでいたどこぞの記者だろう者が数人、出てきた三人を見て走り寄ろうとした。
「すみません、天野さんですよね」
寄ってきた記者に鋭い一瞥をくれると、工藤は遮るように後部座席に天野を乗せ、さっさと武蔵野署を後にして車を三鷹通りへと走らせる。
署を出る時すれ違ったパトカーに、おそらく富田だろう顔を見たが、工藤はもはや振り返りもしなかった。
自分の仕事がうまくいかないからといって、要は腹いせに俺を選んだだけだ。
ばかばかしすぎて反吐が出る。
あいつは昔から自分のことしか考えないやつだった。
人を妬んでばかりいないで少しは頭を働かせて考えたらどうだと思ったこともあるが、わざわざそんなことを言ってやるほど暇じゃない。
要は自分が気づかなければそれだけの話だ。
「ライトの落下事件とか、下剤混入事件とかは話さなくてよかったんですか?」
ややあって、天野がそんなことを聞いてきた。
「ああ、それなんですけど、ライトも下剤も小宮山さんが限りなくクロだとは思うんですが、お前がやったんだろうというには決め手に欠けるというか」
良太は天野の歯がゆさがわかるような気がしたが、容疑者として警察の手に委ねられたのなら、仕事に集中したいと思う。
「小宮山さんが自白するんならですけど、さっきの記者とかにこれ以上撮影現場を荒らされたくない気もしますし」
「そうですよね。次からは撮影に集中ですね」
良太の言葉に天野は納得したように頷いた。
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