なんていうか、絶好調の人ってもう何でもうまくいく、みたいな感じだよな。
良太は森村をしげしげと眺めながらそんなことを思う。
彼女ともうまくいってて、仕事も明るくはきはきと全力でこなすから周りから重宝される。
俺にもあんな時、あったよな。
などとまた後ろ向きになりかけた思考を、良太は遮断する。
第一モリーと俺、そんな年離れてもいないんだから、要は俺の頑張りが足りないっつうか。
気を引き締めていかないとな。
可愛いきれい美人のプロデューサーと自分比べたって、なーんの意味もないんだからな。
良太は自分に叱咤激励すると、食事の後中断していた書類作成にとりかかった。
さっきまで出ていた月が雲に覆われ、風が強くなってきた。
雨の気配が近づいてきた撮影現場では、リテイクを繰り返している乱闘シーンを何とか撮り終えようと躍起になっていた。
「やめろ! さっきより茶番劇だ!」
だが、またしてもカメラを遮った怒号に演者もスタッフも肩を落とした。
「何度目だよ、だったら自分でやってみろって」
「おい!」
こそこそ囁くのは若手のちょっとセリフをもらえたくらいの俳優らだ。
ちゃんと工藤の耳に届いてはいるが、本人にはつゆほどにも届いていない。
「そんなセリフは自分がきっちり撮影に参加できた時に言うんだな」
工藤の代わりに反応したのは、こちらも監督としては若手の安田だ。
今のところプロデューサーの君塚とは喧嘩腰のようなやり取りを披露しているが、実のところいい関係を気づきつつある。
そんな安田にとっては、鬼の工藤と一緒に仕事ができるなど、願ってもないことだったようだ。
下っ端には何故工藤がカメラを止めたかもわからないかも知れないが、安田にはよくわかっていて、雨も心配だが少しクールダウンの必要があった。
「意外だった、広瀬さん」
それこそ意外な名前を耳にした工藤は君塚を見た。
「お昼前にオフィスに寄った時、会いました。もっと、なんかメガネかけてきりきりしたエリートって感じの人かと思ったら、すんごく可愛いんだもん。ほんとに工藤さんの後輩?」
良太が聞いたらムッとしそうなセリフに、工藤は苦笑する。
「どっちかっていうと、プロデューサーってより、アイドル俳優って感じよね?」
すると君塚の声を聞きつけた紺野がやってきて「だろう? 実際、一時人気急上昇の俳優だったんだ」などと言う。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
