月澄む空に9

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「明日以降、急ぎの仕事がなければ、これからそっちに行く。飯は食ったか?」
「いえまだです」
「待ってろ。近くに行ったら携帯を鳴らす」
「Copy That!」
 森村の張りきった返事を聞いた後、車に戻ると、工藤は良太をコールした。
 そろそろ仙台から戻ってくる頃のはずだ。
「はい! お疲れ様です!」
 五回のコールで良太が出た。
「今どこだ?」
「えっと、今飯倉降りたとこです」
「一旦帰ってからでいいが、三茶に来い。後で連絡入れる」
「はい、わかりました」
 三茶? 何かあったのか?
 良太はちょっと首をひねったが、十分ほどで乃木坂に着くと、部屋へ上がり、とりあえずお出迎えしてくれた猫たちのお世話をした。
 そうこうしているうちに、またワルキューレが鳴り響いた。
「世田谷通りのともえ寿司ですね、わかりました」
 車で来ているからタクシーで来いという工藤からのお達しだった。
「まあ、何でもいいや。腹減ってるし」
 途中サービスエリアに寄った時にでサンドイッチをつまんだだけだったので、帰ったらコンビニ弁当でも買おうと思っていたところだった。
「車なら、飲みじゃないよな」
 春以来、天野と飲みに行ったり、森村を迎えに行ったりして、何回か三軒茶屋に出向いて何となく馴染みになっている。
 夜はよく工事をやっているが、車でも首都高には乗らず、二四六を走れば割と近い。
 猫たちがご飯に夢中になっているうちに良太は部屋を出るとタクシーを拾った。
「お疲れ様です~」
 店に顔を出すと、スタッフに個室に通され、工藤のいつもの渋面と森村の満面の笑顔に迎えられた。
「お疲れ様です。え、モリーの新入社員歓迎会とか?」
 座りながら良太が言うと、工藤がフッと笑う。
「お前らは飲んでいいぞ」
 工藤のお許しが出たので、せっかくだからと森村と良太は生ビール、工藤はノンアルコールで乾杯した。
「これからもよろしくお願いしまーす!」
 威勢よくジョッキを掲げる森村に良太も合わせる。
「こちらこそ」
 寿司懐石で空腹が満たされ、最後にデザートのアイスクリームが出ると、良太は工藤を見た。
「それで、何かあったんですか?」
 良太の問いに森村も顔を上げた。
「フン、とにかく食べてからだ。食うか?」
 工藤が自分のアイスクリームの器を二人の前に押しやると、良太は森村の顔を見た。
「じゃ、go halves 」
 森村が言うと良太は笑って工藤のアイスを半分取った。
 二人が一つ半ずつアイスを食べるうち、工藤は茶をすすりながら、今までかつて俺の前で園児並みのやり取りを繰り広げたやつはいなかったな、などと呆れを通り越して見やる。

 


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