夢ばかりなる27 ラスト

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 年が明けた。
 あれから、とりあえず面倒な事件は起きてはいない。
 だが――――――
 工藤は眉を顰める。
 樹、『Tree』から『T』とその世界では呼ばれているという。
 メールでも携帯でもなく、有線の電話を使い、連絡を取るのも年に数回、実際会ったことといえば、ここ十年で数回だが、時間的にはかなり長いつき合いになる。
 本人からは必要最低限のことしか聞いてはいない。
 その波多野とのやり取りが頻繁になったというのは、面白くない状況なのだ。
 波多野から連絡をもらい、さっさと良太を連れて帰れ、と連絡をもらった時は、とるものとりあえずホテルに駆けつけていた。
「くれぐれもあなたのアキレスが良太だと、知られないことです」
 波多野の言葉を思い出すと、苦笑いしか出てこない。
 わかっている。
 わかっているのだが――――――。
 
  

 
 
「うわ、三時じゃん、ナータン、怒ってるだろうな」
 工藤の腕の中から、良太はもぞもぞと起き上がる。
 ナータンをほうりっぱなしで、大晦日の夜から高輪の工藤の部屋にいた。
 くるか、と言われれば、良太はうなずいてしまう。
「うるさいな、まだ春は早い…」
 工藤が良太を引き戻す。
「だって、ナータンが腹減らしてるし」
「まだ死にやしない、ほうっておけ」
 目を閉じたまま、工藤がのたまう。
「なんだよ、ニンピニン……」
 ぶつぶつ言いながら良太は工藤の腕にポフと頭をのせる。
 ちょっと多めにカリカリ置いてきたから、ごめん、ナータン。
 
 
  

 
 いつの間にかまた眠ってしまった良太を起こさないようベッドを降りると、工藤はガウンを引っ掛け、窓辺へと歩いていく。
 こんな夜が至福の時、かもしれないな。
 だが、それもいつまで?
 眼下に広がる灯りの渦の中に落とした呟きは飲み込まれ、工藤の内を闇が蝕む。
 とにかく――――――
 とにかく負けるわけには行かない。
 自分のためにも、そして――――――
 お前のためにも――――――。
 

 


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