夢見月22

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「千雪さん風に言えば、こっちはフェイクだってわかってるわけですからね。それに、江藤さんって、ひとみさんに言わせると叩けば埃がでるらしいですし、あの動画も元は江藤さんとアスカさんじゃない誰かと一緒のものだったのかもしれない」
 良太は江藤についてももう少し突っ込んで調べてもらうつもりだと言って携帯を切った。
 秋山は密かに息をついた。
 まったく、もどかしい限りだ。
 アスカが韓ドラに夢中になっているのは、秋山にとっては有難かった。
 どうやらマスコミはあの動画で二人の不倫を決定的なものとしてヒートアップしているらしい。
 今のところ、この件については小田が窓口になって、一手に問い合わせやらクレームやらを引き受けており、工藤からも秋山にしばらく携帯に出るなというお達しがあった。
 スポンサーには、事実無根であり文化芸能を告訴する旨を、小田からだけではなく工藤からも連絡を入れてフォローしているという。
 だが、この先、例えば動画がフェイクだという証明に至らず、騒ぎが大きくなった場合は、スポンサーがCMの起用をやめると言い出す可能性は十分にある。
 例えばアスカが数年イメージキャラクターを務めている化粧品会社大手の美聖堂だが、いくら社長の斎藤が工藤を気に入っているとはいえ、話は別だということになる。
 美聖堂がそう結論を出せば他数社の対応も追随するだろう。
 さらには秋から東洋商事ニューヨーク支社の広告プロジェクトにアスカも起用されているが、これはまだ始まっていないだけに、白紙に戻される可能性は大だ。
 だが何のために、アスカを陥れようなんざ、いったい何者が?
 無論この業界成功する者がいれば、その陰に涙をのむ者もいるわけで、しかしそんな些末な理由でここまで大仰なことを仕組むほどのことか?
 秋山も仕事がらみでアスカの周囲でアスカに対抗意識を持っているだろうライバル俳優などを調べてみたものの、そこまでやるような者は思い当たらない。
 事務所にしてもそこまで暇じゃないだろう。
 去年のことがあるから工藤への恨みつらみとかで、誰かが仕掛けてきたというのもあり得ないわけではないが、江藤が誰かといちゃついている動画を考えると、やはり良太の言うように江藤側に問題があるとみるのが妥当ではないか。
 秋山もここで悶々とああでもないこうでもないと考えているより、自分で調べて回りたいところだが、アスカをひとりにしておくわけにもいかない。
 あえて現実逃避なのかも知れないが、アスカが今はドラマに夢中になっているのが救いだろう。
 お嬢様の心的ケアの方が重要だからな。

 

 夕方、加藤から良太に連絡が入ったのは、ドキュメンタリー番組「和をつなぐ」の収録現場だった。
「場所が南青山ということは特定できたんで、ちょうど右端の看板に、よく見ると貸し切り、って書いてあって、そのあたり白石らが調べたら、ダンディライオンって店が、ウエディングパーティで貸し切りだったのが、一月二十五日の土曜日ってことがわかった」
 コートを着ているところを見るとその日以外ないだろうと店のオーナーが話していたという。
 ビルのデジタルサイネージを見てもその時期の広告だろうことから、日にちも間違いないだろうし、ウエディングパーティが終わる前ということになると、おのずと時間的にも限られてくる。


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