「でもさ、事実かどうかじゃなくて、疑惑ってだけでもう決まっちゃうようなもんじゃない」
アスカの言うことに秋山もはっきり否定ができなかった。
しかも江藤とアスカが親し気に歩いている動画などが出回ったからには、誰しもクロ確定とするだろうと思われた。
「事実じゃないことはわかってるんですから、それを証明すればいいんですよ」
「ほんと、感心しちゃうわ。あり得ないことが勝手に動画になってるとか」
アスカはほとんど呆れた顔で、パスタをつつく。
「加藤さんが動画を調べているところです。千雪さんも良太も小田さんも動いてますから必ずフェイクだと証明してくれますよ」
「そうね、あたしが諦めたら申し訳ないわよね、みんなに」
そう言うと、ちょうどドラマが最大の悲劇に差し掛かったからかどうか、アスカの目からまた涙が零れた。
秋山はフォークを置いて、ティッシュボックスをアスカに差し出した。
アスカは鼻をすすりながらティッシュを二、三枚取ると派手に鼻をかんだ。
「にしたって、あたし、ただでさえ夜の街を歩くなんてほとんどないのにさ、もし誰かとって言われたら秋山さんくらいしかないじゃないの。あのジジィと一体いつ一緒にいたっていうのよ!」
そう怒りながらも、画面の中で泣いているカップルにアスカの目は釘付けになっている。
「うーん、確かに。そうですよね、ここ数か月っていうもの、ほぼ一緒にいましたしね、たまのオフは、どうせ部屋でゴロゴロしてたでしょう」
秋山はアスカの、いつ、というキーワードが気になった。
「部屋での食料は俺が調達して届けてましたよねえ」
あの動画は日付がいつになっているのだろう。
秋山は気になったことを確認するために、携帯で良太を呼び出した。
「あ、お疲れ様です。アスカさんどうしてます?」
心配そうな良太の声に、秋山は立ち上がって窓辺へと移動した。
「お嬢様はずっと韓ドラを見て泣いてるよ」
「韓ドラ? ああ、今はやりなんですかね、鈴木さんも最近はまって何度も見返してるっていってました。見た方がいいって俺も勧められました、えっと、タイトルは何だっけな」
「さあ、大団円かと思えば最大の悲劇になったり、何かジェットコースターみたいな内容らしいよ。だから最後のハピエンが大きいんだそうだ」
「なるほど……」
「いや、ドラマは置いといて、実はアップされた夜の動画だが、いつのものかってわかってるのかな?」
「そうですね、俺もそれ気になって加藤さんに確認してもらってるところです」
良太は勢い込んで言った。
「ここ数か月、実際アスカさんが俺以外の誰かと一緒だった日とか、数えるほどしかないんだよ。部屋に送り届けてもなんだかんだ打ち合わせしてから帰ってるから、はっきり言ってほかの誰かと夜の街でいちゃつくとか、そんな時間はないんだが」
「ですよね。まあ、真夜中、コンシェルジュの前を通らずに外に出たとかって言われると、否定するのは難しいかもですけど」
疑ってかかられれば、ちょっとやそっとでは覆すことができないだろう。
「ただ、いつの設定になっているのかがわかれば、アスカさんのスケジュールと照らし合わせれば、ひょっとしたら、フェイクだってことを証明することができるかも知れない」
そこから切り込んで動画の真偽を確かめられれば。
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