そんな江藤と、ドラマや映画で主演を張る、美人だが悪を許さない的なはっきりしたキャラが人気のアスカとのスキャンダルだからこそ、マスコミが騒いでいるのだ。
だが、優柔不断なヤツ、とひとみは江藤を一刀両断、どちらかというと嫌っていた。
「あいつ、コソコソ共演者つまみ食いするの得意だからさ」
そんなことも言っていた。
やっぱり江藤をもっと調べるべきかも知れないな。
良太は一人頷いた。
シンクの向こうの窓からも陽光が差し込むキッチンはアイランドキッチンで、アイボリーで統一され、木製のアイテムがポイントになって、居心地のいい空間がリビングへと続いている。
薄切りにしたニンニクをオリーブオイルに放り込むと、秋山は続いてベーコンと玉ねぎ、なす、トマトを入れて塩、コショウで炒め、湯でておいたパスタと和える。
「すっごい美味しそうな匂い!」
朝からリビングのソファに陣取って、壁にかかった大型テレビの前から動こうとしなかったアスカがようやく振り返った。
「涙を拭いてからでいいから、ちょっとそこのテーブルあけてくれないかな」
秋山はパスタを皿に盛りつけると、カトラリーとランチマットを手にキッチンから出てきた。
ティッシュで涙を拭いたアスカはテーブルに乗っているタブレットや雑誌とティッシュボックスを自分の座っている横に置いた。
「きれいに片付けろとか言わないから、秋山さんて好き! 前の事務所のマネージャー、細かくて文句ばっかでしょっちゅう喧嘩してたもん。秋山さんO型でよかった!」
ランチマットとカトラリーをテーブルの上にセッティングすると、秋山は今度は湯気をたてているパスタを持ってきた。
「君を見てて文句の一つも言わない人間がいるとは思えないけどね」
「すんごい美味しそう!」
明日かは秋山のセリフを無視してパスタの香りをかぐ。
「さっきとまったく語彙が同じですよ」
秋山はミネラルウォーターの入ったグラス二つを手に、どうでもよさそうに言いながら、アスカの斜め向かいに座り、テレビに目を向けた。
大きな画面では朝からずっと韓国ドラマが映し出されていて、そろそろ最終話に近づいていた。
「いただきまーす!」
アスカは早速パスタに取り掛かるが、ドラマが次の展開に移ると口にパスタを詰め込んだまま画面を見つめ、やがてまた目じりから涙が零れる。
「これ二度目ですよね」
秋山はティッシュボックスをアスカに差し出した。
「だって何度見てもいいのよ!」
アスカは数枚のティッシュで涙を拭いて派手に鼻をかむ。
「大団円ですか?」
画面では男女二人だけの結婚式が進んでいた。
可愛い女優が幸せそうに誓いの言葉を口にしている。
「ううん! このあと、最大の悲劇が待ち受けているのよ!」
アスカが秋山の言葉を否定した。
「バッドエンドでしたか」
「違うわよ! 最後は最高の幸せで終わるの」
「はあ、それはまたジェットコースターのような展開ですね」
たいして興味もなさそうな口調で秋山は言った。
「いいなあ。私もこんな幸せなドラマに出たかったなあ」
秋山はアスカのセリフにフォークの手を止めた。
「出たらいいでしょう。過去形で言うのはやめてください」
「だあって、不倫スキャンダルの末路は知れてるわよ」
アスカは軽く言った。
「不倫とか事実じゃないんだから、そうはなりませんよ」
秋山は少し語気を強めた。
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