真夜中の恋人64

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 不意に目を覚ましたのは、喉がひどく渇いていたからだ。
 少し身体を動かそうとすると、京助の腕が伸びてまた千雪を抱き込んだ。
「……まだ夜中だ……」
「……喉、乾いた……」
 すると京助がベッドを降り、「待ってろ」と素裸のまま冷蔵庫からミネラルウォーターを取ってくると、グラスに注いだ。
 千雪は身体を起こしたが予想以上に重い。
 ゴクゴクとグラスの水を飲み干して、空のグラスを京助に渡し、京助に背を向けてベッドに横になる。
 自分もグラス一杯水を飲み干すと、京助はまた千雪の横に身体を滑り込ませた。
「せっかくの愛の語らいに、何も背を向けるこたないだろ?」
 ニヤニヤと京助は千雪のうなじを指でさする。
 その指が触れた途端、千雪の心臓はドクンと跳ねた。
「何が愛の語らいや。やりたいだけのくせに」
 フンと鼻で笑いながら、京助は肩に唇を落とす。
「千雪ちゃんだって、すがりついてきちゃったくせに」
「うるさい! ただの慣れや!」
 振り返って千雪は京助に怒鳴りつけ、また背を向けた。
「しっかり慣れてくれて俺は嬉しいぜ」
 背後から抱きすくめる京助の腕の中で千雪はじたばたと暴れる。
「うるさい! うるさい! ドアホ!」
 さっきまでさよならしようとしていた男にすっかり身体で丸め込まれたような気がする。
 ソファから絨毯の上で散々やりたい放題、さらにバスルームに連れて行ったはいいが、結局またでシャワーを浴びながらまた京助は抱きしめずにいられなかったのだ。
「こらこら、いい加減、こっち向けよ? 千雪ちゃん」
 腕ずくで千雪を振り向かせる京助に抵抗して、その手を振りほどいて枕に顔をうずめる。
「何が、千雪ちゃんや! お前の正体なんかわかっとんのんや! 今までどんな女連れてきよったか知らんけど、こんな部屋で俺が篭絡される思たら大間違いや!」
 はたと京助はその時、気がついた。
「ありゃりゃあ、わかっちまった、千雪ちゃんが何を拗ねてんのか」
「誰が何で拗ねなあかんね!」
 妙にわかったような京助の口ぶりに千雪は振り返る。
「まさか千雪ちゃんが妬いてくれるなんて、京助先輩は舞い上がっちまうぜ」
「どこをどうとったらお前の頭にはそんな科白が湧いてくるんや?! 自信過剰の厚顔無恥を絵にかいたようなヤツやな! ドアホ!」
 ニンマリと顔を覗きこまれた千雪は思い切り京助を全否定した。
 背を向けようとしてしっかと肩を掴まれ、唇を奪われる。
 そうや!
 わかっとるわ!
 あの変な気持ち悪さが何かなんて。
 嫉妬や。
 大体、何でこんなスケコマシのことで俺が妬かなあかんね!
 そんな自分が腹立たしくて、逃げ出したくて、さよならしようとして、結局捕まるやなんて、自分のドン臭さ加減が、また腹立たしい。
「……苦し……わ! アホ!」
 京助はようやく唇を離し、だが逃れようとする千雪に今度は足を絡めて動きを阻む。
「天にも昇るってこのことだな?」
「……え、アホ、いくら何でももうアカンで、京………」
 そんな抗議など聞く耳をもたず、ガバッと体勢を変えて京助は千雪をベッドに押し付けた。
「せっかくロマンチックな夜じゃねぇか……まだ、明るくなるには時間があるって」
 強烈な男の色も顕な眼差しで京助は千雪をそこに縫いとめる。
 魅入られたようにぞくりと、千雪の背中が震えた。

 


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