Act 2
何でこうなるんや!
千雪は心の中で喚いてから、立ってビールを継ぎにまわったりして、あちこちに愛想を振りまいている佐久間を睨みつける。
御茶ノ水にあるこの居酒屋は、多くの学生で溢れる中、この店の店長が佐久間の高校の先輩だというので、割と急だったにもかかわらず総勢二十名ほどの席をキープできたらしい。
小テーブルには宮島教授と千雪、それに法医学研究室の準教授の伊藤と心理学教室の関谷教授が座り、あと全員が陣取った傍の大テーブルは大原文子と牧村久美を中心に大いに盛り上がっている。
千雪は始めから来るつもりはなかったのだ。
「今夜、法医学研究室と心理学研究室と一緒に飲み会だってね。あまりそんな機会はないから、みんな張り切ってるよ。君も行くよね?」
宮島教授がそう切り出したりしなければ。
「いや…………、俺なんか行っても、あまり歓迎されへんと思いますし……」
「そんなことあるもんかね。法医研の牧村くんや佐久間くんから、ぜひ君を連れてきて欲しいって頼まれちゃってね」
佐久間のアホがぁ!!!!
教授から手を回させるなんて姑息なことをしやがって、と思ったものの、宮島教授の誘いを無下に断ることもできない。
仕方なく、適当なところで切り上げようと思いつつ、教授についてきたわけである。
確かに、大学に進学してからは苦心したこの眼鏡やボサボサ頭、それにダサダサの風貌のせいで、ごく普通の大学生ならあたりまえのコンパや飲み会などに誘われることもなく、今まで過ごしてきてしまったが、千雪としてはそんなことはどうでもよかった。
「千雪先輩、飲みが足りてまへんで!」
あっという間もなく、佐久間が教授らと同様に千雪のグラスにもビールを注ぐ。
ウザい…………
睨みつけても、結構このメガネのせいで、ちょっと見ではあまり表情がわからないらしい。
いい加減、このコスプレも面倒くさくなってきたところなのだが、それをやめた時の周囲の反応を考えると、自意識過剰と言われようと、もっとウザいことになるに違いないのだ。
「先輩もあっち行って一緒に飲みましょうよ」
「俺はここでええ」
佐久間の誘いを、千雪はきっぱり断る。
「私たちに遠慮しなくてもいいんだよ?」
宮島教授の気遣いもありがたくはない。
「さすが名探偵ともなると、俺らのような下っ端とは酒も飲めないってわけだ?」
よく考えれば、京助には非がないのだが、この速水という男には強烈に頭にきていた。
ひいてはあんな下卑た台詞をはくこの男とご友人な京助も気に入らない。
おそらく京助の部屋にいた人間と今ここにいる千雪が同一人物とは気づいていないようだが、いずれにせよ皮肉屋で性格は曲がりくねっていそうな気がする。
わざと人を煽って反応をみようという魂胆かもしれないが、到底好きになれない男だ。
「確か、五年前? 六年前だったっけ? お二人、付き合ってたわよね?」
大テーブルの方では、牧村が早速、京助と文子の焼けぼっくいに火をつける会の口火を切ったらしい。
「大昔の話だ」
京助がイラっとして即答する。
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