「工藤さん…でも…」
言いかけた良太の言葉を遮り、工藤は言った。
「会社のひとつやふたつどうにでもなる」
二人が出て行って閉まるはずのドアがまた開いた。
「残念ながら、そんな面ろい記事とか、書けへんで」
入れ替わるように入ってきた黒縁メガネの男が言った。
それは先日、良太を部屋の前から連れ去った小林という物書きだと土方は思い出した。
「お手紙差し上げたのは俺たち。てめーの所業はさっき茶店でしっかり携帯ん中」
携帯のアプリの画面をわざと見せつける背の高い方の男。
こいつ綾小路京助か?
土方はムッとした顔で二人を睨み付ける。
「しかも、画像もここにありし。送信ボタンで簡単に警察に送っちゃえる」
千雪は携帯の画像を土方に見せる。
「なるほど、名探偵コンビがわざわざご登場ってわけか」
土方は起き上がり、フン、と鼻で笑う。
「ごたいそうなこって。あんなガキ一人に」
平然とタバコをくわえる。
「安心しろよ。女に振られてむしゃくしゃしてたから、あのガキをちょっとからかっただけだ。本気で記事なんか書くつもりはねーよ。あの、工藤はもともとでっきれーだがな」
吐き捨てるように言った土方に、千雪は言った。
「まあ、あなたがバカなことをしない限り、恐喝事件はなかったいうことになります」
そう言い置いて出て言った二人の背中に、土方は声を上げて怒鳴りつけた。
「とっとと消えろ、おせっかい野郎ども」
土方のマンションを出ると、千雪は心配していたアスカに電話を入れた。
「え、じゃあー、良太、工藤さんと仲直りしたんだ?」
「まあ、そうみたい」
「今度は工藤さんの、早合点だったの? やーね、良太なんて、もう工藤さんに、すり込みしたひよこみたいにぞっこんじゃない。もうさー、良太が暗いと会社も暗くってしょうがないのよー。よかったー」
千雪には土方のことなど話すつもりはないけれど。
「今回は俺の失言が原因の一つでもあるし」
隣で京助がブツブツ言っている。
「俺も良太にはいろいろ悪いことしたなと思うとるし、とりあえずアスカさんから良太に伝えてくれへん?」
「何を?」
「京助がつまらんことを言うたって謝ってたって」
「やだ、京助ってば、良太苛めたの?」
「せやから、自分でも誤りに行く言うてるし」
フン、とそっぽを向いているが、京助もばつが悪いらしい。
とりあえず、納まるところに納まってくれれば、と千雪は思った。
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