Vacances27(ラスト)

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 後を追いかけて、ジェノバで捕まえるしかない、と、工藤はともかくエレベーターホールに向かう。
 あの野郎!! 人の気も知らないで!
 工藤が荷物を持って再びフロントに現れると、そこには加絵と鴻池が待っていた。
「どうした、慌ててどこへ?」
「いや、急用ですぐに発つ事になりましたので、また東京に戻ってから改めてご連絡します」
 鴻池にはそう言ったが、加絵に向かっては掴みかからんばかりに詰め寄る。
「エンツォが良太を連れ出した。やつはここに居る間ずっと、良太にちょっかいかけていた。いいか、やつが良太に何かしたら、ただじゃおかない。それだけは言っておく。世話になった」
 工藤はそ言うと、悲痛な表情を見せて唇を噛む加絵には目もくれず、ホテルを飛び出すと、停まっていたタクシーに飛び乗った。
 アウトストラーダを運転手を急かしてすっ飛ばし、荷物を掴むと空港内に走りこむ。
 だが走り回るには衣類の入った荷物が邪魔だった。
 工藤は盗まれることは承知でそれを放置し、重要なものの入った小ぶりのバッグだけを掴んで良太を探した。
 ひょっとしたら、エンツォに唆されてどこかへ連れ去られたのでは、という不安が過ぎる。
 だが―――――――
「良太!!」
 金髪の男と黒髪の男が肩を並べて歩いていたが、その声に良太が振り返る。
 驚いて、立ち止まる良太。
「工藤…さ…ん」
 いきなり強力なパンチを見舞われて、吹っ飛んだのは、ボーっと立ちすくんでいたエンツォだった。
 
  

「どうすんですか、エンツォ」
 ミラノ行きの小さな飛行機の中で、良太はまだぶすくれたまま、工藤に文句を言った。
「ふん、あれしき蚊に刺されたくらいなもんだ。あいつが最初からお前狙いだったのは、スタッフ連中だって知ってたぞ」
「へ? 俺ねらいって…」
 良太はぽかんとした顔で工藤を見る。
「バカヤロウ! やつはバイなんだ。モデルなんかやってる連中に、気安く近寄るんじゃない」
「まっさか…」
 どうしてこいつは自分のことにはこうもニブチンなんだ。
 工藤はイライラと眉を顰める。
「大体きさまは、何度同じ目にあえばわかるんだ!」
「んなこと言ったって…」
 わかるわけないだろっ!
 そう言い返したいのをとどめて、必死で工藤が自分を追いかけてきてくれたことが改めて嬉しいと思う。
 エンツォには悪いことをしたが、まさかそういう下心があったとは。
 思い返してみれば、やたらとスキンシップの好きなやつだったけど。
「でも、エンツォ殴ったりして、加絵さんとまずいことになんないかな~」
「ああ、加絵にはよく言っといた。今度エンツォがお前に何かしたらただじゃおかんってな」
 鴻池も自分と良太がどんな関係だろうと、吹聴するようなこともあるまいし。
「うっそー!」
 良太は聞き捨てならない工藤の言葉に思わず顔を覗き込む。
「だって、社長、あのヴィラまた撮影で使うんじゃ…」
「向こうが悪いんだ、何も文句はあるまい。それに撮影とは関係ない。それだけの謝礼はするんだからな」
「だって…」
「まだ何か文句あるのか」
「そりゃ、あんたの女のことなんか、俺には関係ないですけどねっ!」
 ふん、と良太は窓の外に顔を背ける。
「お前はバカか」
「どうせ俺はバカですよ」
「昔の女のことなんか持ち出して何の得がある」
「とか何とか、その昔の女と満更でもなかったくせに」
 工藤はふん、と鼻で笑う。
 良太は工藤を振り返る。
「何がおかしんだよっ!」
「それで加絵を妬きまくってたのか?」
 良太はかぁーーっと頭のてっぺんまで真っ赤になる。
 そんなところは可愛いものだ。
 工藤はまた笑う。
「言うに事欠いて、何だよっ、その言い草は」
 ふいにキスが良太の唇をかすめる。
「騒ぐな。周りにはた迷惑だ」
 工藤はもう言葉もなくなった良太に、ニヤリと笑った。

     おわり
 


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