真夏の危険地帯11

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 四年前、別れを告げてこの町に戻ってきた元気を忘れられず、豪はストーカーのように元気を思い続けて、最近注目のカメラマンのくせに、ついに元気の住む近くの町に引っ越してきてしまうほど元気一筋な男で、いつも元気の顔を見ると喜んで尻尾を振って駆けてくるリュウと次元が一緒よね、などと紀子に言われている、バカみたいに一途な男なのだが。
「豪さん、今頃泣いてるよ」
 紀子からさらに冷たい一瞥を投げかけられて、元気はうっと言葉に詰まる。
 下手に豪に話すとグジグジしそうだからと、浅野に断り切れずにこっそりほんのちょっとならと出てみたライブだったのだが、やっぱり全然世の中に乗り遅れた過去の人間ってとこじゃないか、俺は。
 去年の夏、ちょっとした行き違いから一平に何やら言われたらしく、以来「GENKI」に戻って一平の元に戻るんじゃないのかと、必要以上に豪は意識していたのだ。
 だから俺は………。
 あーあ、と元気は心の中でため息を吐く。
 その時ドアが開いて、また数人の観光客が入ってきた。
「いらっしゃいませ」
 気を取り直して、元気は何とか仕事モードに切り替えた。
 しかし、ネットで大騒ぎになってるわよ、という紀子の台詞が頭の片隅に引っかかり、閉店時間になると店を閉めるなり小雨の中を家に飛んで帰り、ちまちま携帯で見るより早いだろうと部屋に上がってパソコンを開いた。
 そこには元気の予想をはるかに超えた状況が繰り広げられていた。
「冗談だろ………」
 昨夜のライブ動画がネットに氾濫している。
 アクセス数も半端ない。
 中には携帯とかではなく、絶対望遠で撮っただろうという画像までアップされ、ベネチアンマスクとブロンドのかつらの自分がしっかり写し出されている。
 この調子だといったいどこまで広がっているのか想像もつかない。
 個人ではなくマスコミの記事としても、新メンバーを小出しにしているのではなどというものはまだいい、謎のベネチアンマスク、幻のギタリストは一体何者だ、などと明らかにユーザーを煽っているものもある。
「ったくこれじゃ、まるでピエロだ」
 自分自身を罵倒して、元気はパソコンを閉じると、リュウの散歩に外に出た。
 この辺りは夕刻になれば風の温度も下がる。
 短い通り雨だったが、雨の後ならぐんと涼しい。
 東京にいた頃のことを思えば、窓を開けて、少しくらい寝苦しい時があっても扇風機でもかけていれば夜もぐっすり眠れる。

 


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