真夏の危険地帯10

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「元気、昨日はどこ行ってたの?」
 さくっと紀子は切り込んだ。
「昨日? だから将清たちと会うって言っただろ?」
 優作が見せてくれた携帯の動画を思い出して、どうやら紀子が既に元気が何をしていたか知っているような気はしていた。
 昔の元気を知っている連中なら、やはりあのギターが元気だとわかるのだ。
「あたしに隠す必要ないじゃない!」
 その台詞にできれば気づかないでほしいという元気の密かな願いは呆気なく崩れた。
「ネットでライブ見て、すぐに優花に確かめたんだから」
「悪かったよ。とにかくあれは、浅野が、って、事務所の社長だけど、元気だってばれないようにすればいいからちょっとだけでも出てくれって強引に……まさか、動画アップされるなんて思わないだろ」
 これは思った以上に紀子の機嫌を損ねたらしいと理解して、元気はこの上なく神妙な顔になる。
「「GENKI」はそこんとこ緩いって言われてるのよ。あたしだって元気が出るんならライブ、行きたかった!」
 グスっと今度は泣きが入り始めた紀子に、元気は慌てた。
「悪い、ほんと、ごめん、黙ってたことは謝るし、それにあんなのちょっと二、三曲やっただけだし……」
「何言ってんのよ、ネット、大騒ぎになってるわよ! マスコミもすごいライブだったって、あのギタリストは一体誰だって」
「え………ウソ…だろ?」
 元気は嫌な予感に襲われた。
 まるでその予感が当たったかのように、やがて店の電話が鳴った。
「はい、伽藍でございます。あ、お疲れさま。うん、いるよ、今なら平気」
 紀子はそう電話の相手に告げると、「はい、元気」と受話器を差し出した。
「え……」
 嫌な予感はあたったようだ。
「はい……ああ、お前か。仕事は順調か?」
 とりあえず、何事もなかったかのように、元気は言った。
 すると電話の向こうで豪がしばし黙りこくった。
「豪?」
「仕事はあと二日で終わる。終わったらすぐに戻るから、ちゃんと説明しろよな」
 受話器越しにも怒気が伝わってくる気がする。
「説明ってなんの?」
 そんな風に言われると、元気の方もカチンとくる。
「そういうこと言うわけ? 別にあんたが俺にだまってライブに出ようがどうしようが関係ないって?」
「わかってるじゃないか。俺がお前の仕事に口出ししたことがあったか?」
「ああ、そうかよ、よくわかった」
 途端、電話は切れた。
 元気は一瞬事態を把握しかねた。
 不快な機械音に気づいてやっと受話器を戻す。
 あんな風に言うつもりはなかったのだが、つい、売り言葉に買い言葉というやつだった。

 


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