真夏の危険地帯20

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 豪はオーストラリアに発ったはずだ。
 朝、車の音で元気が目を覚ました時には既にいなかった。
「どっかいい店連れてけよ」
 客が入ってきたのと入れ替わるように、じゃ、あとで、とみっちゃんは店を出て行った。
 何だよ、重要な問題って。
 またしても頭を悩ませそうな何かに、元気はモヤモヤしたままカウンターを出て、新しい客のオーダーを取りに向かった。

  

 五時を過ぎてからも、ドアが開くたびに、涼しいというには程遠い、じめついた生ぬるい空気が流れ込んできた。
 一番忙しい昼過ぎから二時間ほどは、紀子の代わりだと彼氏の克典が来てくれたのだが、ありがたいことに今日はさほど混みあうこともなく一日が終わりそうだ。
 朝から今一つ調子が出ないし、約束などバックレたい気分だが、相手がみっちゃんとなれば話は別だ。
 しかも意味深な言葉を残して行ってくれた。
 みっちゃんのやつ、喰えない性格に磨きがかかってないか?
 おそらく、豪のバカは、またテレビとかネットとかに錯綜している情報をまたご丁寧に見て、また余計なことを山ほど考えて悶々としているに違いない。
 ったく、あんな風に果てるまで好き勝手させてんのに、わかれよ、いい加減……
 お前を好きじゃなきゃ、あり得ねーだろ!! バカ!
 浴びせられたキスの数はうっとおしいほどで、朝までしつこく元気を離さなかった豪に心の中で毒づいた元気は、知らず頬が火照り始めるのを何とか振り払い、今入って来た客のオーダーを取りに行くべく、水を注いだコップをトレーに乗せた。
「カフェオレとモカお願いします」
 窓際のテーブルに落ち着いたのは見覚えのある高校生カップルだった。
 はっきりした声で元気に告げた少女は、髪はポニーテール、スカートも長過ぎず短過ぎず、セーラーカラーにきれいに結ばれたリボンは優等生を絵に描いたような女子高生で、白い半そでからのぞいた腕は細く、眼鏡のある顔は高三にしては幼く見える。
 彼女が高校の部活の後輩にあたることは、この店にたまに二人で寄るようになってから声を掛けられて知った。
 部活といっても当時元気が活躍していたサッカー部やスキー部といったあの高校にしては華々しい体育系の部活ではなく、ちょっと名前を貸しているだけと思われていた文芸部のことである。
 部活以外でもバンドを率いてちょこちょこライブなどをやりその外見と相まって小さな街のことだ、校内外に名前と顔が知られていた元気だが、元気の性格上、籍を置くとすればやりたいから活動していたのである。
 今思うとよくそんなあちこちよくやっていたよなと、若さゆえの自分に呆れるのだが。
「今日は登校日かなんか? まだ夏休みだよな?」
 カフェオレとモカが入ったカップをテーブルに置きながら、元気は尋ねた。

 


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