悪いのはちゃんとはっきりさせなかった自分だ、元気を勝手に好きになったのは自分だからと豪は言うが、自分に非がないわけがないと元気はわかっている。
起きるべくして起きてしまった結末に、そしていろんな感情のせめぎ合いから、あの時、元気はこの街に逃げ帰ったのだ。
結局、豪は元気を追いかけてきて、元気は豪を受け入れてしまったのだが。
元気の中でわだかまりが未だに燻り続けている。
優花が今はマサとつき合っているとはいえ、この先どうなるかなんて誰にもわからない。
豪がいつまで俺に対してあんな一途な目を向けているかなんて。
お前がいつか俺を見なくなることが、俺のが怖いんだということを、あのバカは知らない。
別れなんて、いつでも唐突にやってくるのだ。
早めに店を閉めた元気は、リュウの散歩を済ませるとタクシーでみっちゃんの停まっているホテルに向かった。
「山間で、ほんとに隠れ家的。看板もひっそりとしてるし、静かでいい感じ。天井たか……」
みっちゃんを連れて行ったのは路傍だ。
奥の小座敷が空いているというので、そこに落ち着いた。
きゅうりと野菜の酢の物、豆腐のオクラあんかけ、ゴーヤとコーンのさっぱりサラダにナスのしぎ焼きなどがテーブルに並び、ひとまずビールで乾杯する。
「しかし、何か段々オヤジ入ってきたよな」
テーブルに並んだ料理をしげしげと眺めて元気がボソッと口にした。
「カラアゲだのスペアリブだの、昔はみっちゃんコッテリ系並べてたのに」
「夕べ飲み過ぎたんだよ。まあ、確かに年と共に好みも変わるわな」
ナスをつつくみっちゃんを見て元気は苦笑いする。
「やめてくれ、まだアラサーだっての」
「お前だろうが、先に言い出したの」
みっちゃんはジョッキのビールをゴクゴクと飲み干した。
「それで、重要な問題って?」
そういえばみっちゃんと涼子って、高校時代から続いてるっていう、希少なパターンだよな、まあ、別れたりくっついたり何度目だか知らないが。
ぼんやりとそんなことを考えながら、元気は一平の濃い顔とは対照的なさっぱり系のみっちゃんの顔を見つめた。
「せっかちだな、元気」
「どこがせっかちだ。もう四時間以上も待った」
するとみっちゃんはこれ見よがしに大きなため息をつく。
「こんな静かで心地よい空間で、美味いもの食って誰にも邪魔されずに愛しの相手とイチャコラできれば、そりゃ、ゴミゴミした都会で汚れた空気を吸いながらロックやろうなんて思わないさな」
「皮肉ぶちかましてもったいぶってんなよ、俺が聞いてるのは、重要な問題ってやつで……」
みっちゃんは尚もキリキリした元気の問いをはぐらかすように、店のスタッフを呼んで、冷酒を二つ頼んだ。
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