しかしな、とみっちゃんは続けた。
「たまに一平が元気にありつけるとなれば、一平のパワーは倍増するんだけどさ、ほら、ネコを遊ばせるときみたいに、たまにキャッチさせてやらないと興味をなくすだろ? つまり全然、報われないってことになると、一平は仕事だろうが放りだしかねない」
「みっちゃんって鬼畜なことよく平然と言えるよな」
呆れて、元気はようやくそう口にした。
「けど、元気だってわかってたはずだろ? そもそもGENKIは一平がお前のために作ったんだ。あの一見ちゃらんぽらんな一平にはお前が必要だった。要は、一平のお前に対する情熱がGENKIの動力源そのものだった。一平が追いつくか追いつかないかってところでお前を追いかけてるっていうデンジャラスゾーンにある情熱から生まれる音楽こそにみんなが引き寄せられてるわけで、もし、一平が元気を追いかけなくなったら、その時はGENKIも終わりってこと」
断言するように、みっちゃんは言い切った。
「一平が俺じゃない誰かを渇望するようになれば、その相手に情熱を向ければ済むことだろう」
「その時はもうGENKIは成り立たない。そうなってみないとわからないが、仮に俺らの音楽活動が続くとしても、それはもうGENKIじゃない別物だろう」
みっちゃんは冷酒をうまそうに飲んだ。
「それに、お前、一番大事なことを忘れている。GENKIの曲のメインは昔からほとんどお前が作ってるんだぞ!」
「曲なら一平もみっちゃんも作ってるだろう。俺じゃない他の誰かが作ったって、それはそれでいいものが生まれるかもしれないじゃないか」
「ま、な。ともあれ、お前がどこにいようと、誰とくっついていようと、GENKIはお前なしには存在し得ないってことさ」
「だからって、今の俺にはどうしようもないし……」
「今の、ってことは、昔ならどうかしようもあったってことか?」
元気の言葉にすかさずみっちゃんは突っ込みを入れた。
一瞬、元気は言葉に詰まる。
「んなの、言葉のアヤってやつだ」
「……ま、いいけどね」
ちょうど鮎の塩焼きと里芋のあんかけがきて、しばらく、二人は黙って酒を口に運んだ。
明日は明日の風が吹く。
ふいに父親の口癖が元気の脳裏に浮かぶ。
それって、明日はどうなるかわからない、ってことでもあるよな。
確かに、今の自分がいるこの状況を例えば高校の時には想像もつかなかった。
もし、豪に会わなければ、豪に近づかなければ、おそらく元気はグループを抜けることもなかっただろうし、ひょっとしたらGENKIのメンバーでライブを続けていたかもしれない。
メジャーデビューとか、他のメンバーのようにそれほど望んではいなかったとしても、やりたくないというわけではなかったから、そのままきっと、一平ともずるするとあやふやな関係のまま続いていたのだろうか。
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