真夏の危険地帯6

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「何で一平が俺のホテル知ってんの? 一平には教えるなって浅野にも言ってあったはずだけど」
 今回の上京は実のところプライベートでも極秘機密で目的も上京する事すら誰にも教えていない。
 しかも一平って、冗談だろ、またぞろおかしな誤解を招くだろうが。
 ただでさえ、豪のやつ、一平のこと疑ってんのに。
「え、でも一平さんとつきあっているんじゃ……」
「はあ? 何でそんなことになってんの?」
 確かに葛城、ゲイもバイも気にしない男なのかもしれないが。
「いや、だって、こないだ、一平さん俺のこと捕まえて、元気に手を出したら承知しねぇ、俺のもんだとかなんとか……で、俺はそんなつもりはないって。そしたら、ホテルを聞かれて、送る時にその伝言を元気に伝えておけ、と」
「あんのやろお!」
 下手して部屋に乗り込んでこられた日には誤解だけですまないかもしれない。
「違ったんですか? でもステージじゃすごく息が合ってたし、俺はてっきり……」
「はあ、仕方ない、葛城のせいじゃないから。悪かったな」
 エントランスの車寄せで元気を降ろすと、また翌朝新幹線の駅まで送ります、と言い残して葛城はまたベイアリーナへ戻るべくハンドルを切った。
「ったく、何時だよ今……九時過ぎか、よし」
 元気はこの手しかないか、と呟きながらフロントに向かった。

  

 部屋でシャワーを浴びると、一平に指定されたバーラウンジで生ハムやチキンのサラダ、それにビールで軽く夕食にして、ウォッカソーダを呑みながら元気はキラキラと輝く横浜の街を見おろした。
「何か久しぶりだな、この、都会って雰囲気」
 すると後ろからポンと肩を叩かれ、「世の中を騒がせて消えた謎のギタリストがなんつう陳腐な台詞だ」という声に、元気は、「遅いぞ」と笑う。
「素直な感想を述べただけだろ。待て、将清、何だその謎のギタリストだの世の中騒がせただのって」
 隣に座ったのはいかにも都会的なイケメン、その隣には「久しぶり」と笑うちょっとベビーフェイス、とはいえスーツが板についている。
「当の本人が何言ってる、俺らまでだまくらかそうなんて思ってるんじゃないだろうな?」
「すごかったみたいじゃないか、今夜のライブ」
「え、何で知ってんの? 優作まで」
 訝しげに元気は二人の友人の顔を交互に見た。
 二人は大学の同期で、卒業後もちょこちょこ連絡を取り合っている友達だ。
 二人とも同じ大手出版社に勤務しており、毛利将清はスポーツ誌、江川優作は美術誌の編集部に在籍している。
「お前、田舎にこもってるうちに、ITの威力まで忘れちまったのか?」
「とっくにネットで流れてるぜ、知ってるやつはすぐお前だってわかるだろ」
 優作は自分の携帯の画面を元気に見せた。
 そこには確かにたったさっきのライブの様子が映し出されている。
 元気は天を仰いだ。


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