真夏の危険地帯8

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 黒ずくめだがタンクトップに上着を着ているだけ、一平にしてはマシというところか。
「一平? 本人? びっくりした」
 優作が言った。
「誰だ?」
 元気の左隣に腰を降ろした一平が元気に尋ねた。
「同期の毛利と江川だろうが。それにお前、去年も会ってるだろ、ライブも来てくれてたし」
「物覚えが悪いからな」
「ご注文は……」
 早速やってきてオーダーを取るウエイターの声がひっくり返りそうになっている。
「それより、お前、葛城にいい加減なこと言ってんなよ」
 早速元気は切り出した。
「いい加減なことなんか言ってない」
「言っただろ、俺がお前の何とかかんとか」
「あいつがお前を妙な目で見てたから、釘を刺しただけだ」
「ったく」
 これだからと元気は頭を抱えそうになる。
「俺を変な目でみるヤローなんか、そうそういるかよ!」
「それはお前、認識不足だぞ」
 意外にも一平に加勢した将清を元気は振り返った。
「学生ん時も、強面の一平の傍にいたから誰も手を出せなかっただけだろ。現に去年の夏だって赤坂プロの社長に目つけられてたじゃないか」
「あんなアホヤローなんか問題外だ!」
 元気はさも嫌そうな顔をした。
「それより葛城って? 葛城智治のことか? 野球部の」
「知ってるのか? 弁護士で、最近「GENKI」の事務所に入ったって」
 将清は頷いた。
「あいつ、大学野球で一年の時から剛腕投手で活躍してて、結構スカウトの連中が来てたんだが、三年の時肩壊してさ」
「そういやしっかりした体格してたよな。けど、弁護士に転向ってすごいな」
 素直に感心する元気の肩にがしっと一平が腕を回す。
「とにかく自覚がなさ過ぎんだ、お前は。で、いつ戻ってくるんだ」
「だから、それは……」
 元気は口ごもる。
 一平は腕を離し、ウイスキーのロックをぐいと飲み干すと立ち上がった。
「待ってるからな、元気」
 元気の耳朶に直接囁くように言い残して、一平はラウンジを出て行った。
「ったく…」
 元気は思わず耳に手をやった。
「しっかし、愛されてるねぇ、元気」
「はあ? 何言ってるんだよ」
 将清を睨みつけた元気はイラついてグラスを空ける。
「可哀想にな、一平って学生時代からずっとお前に報われない思いを抱いてさ」
 将清の言葉に元気は眉を顰める。
「え、そうだったのか?」
 優作まで身を乗り出して元気を見た。
「あいつとはずっとダチで仲間なんだよ。まあ、昔はちょっと戯れてたこともあったけどな」
 ぼそぼそと元気は言い訳する。
「なるほど、複雑な人間関係ってやつだよな。豪と一平の板挟みになって」
「うっさいよ、将清」
 揶揄する将清に元気は言い返す。

 


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