「それより、幻のなんちゃらって、いったいなんだよ? みっちゃんはどうしたよ?」
元気は話題を無理やり変えた。
「フン、お前が冬に俺らとじゃねぇとこで、ギターなんか弾くからだろ」
一平が吐き捨てるように言う。
「まさか、ちょっと飛び入りしたくらいで、こんなことになるなんて誰が思うよ」
「豪のやつがお前の写真なんか人目にさらすからだろうが」
そこは一平と意見を同じくした。
「将清、携帯、貸してくれ」
将清から携帯を受け取ると、元気はバーの外に出た。
「おい、何で一平がくるんだよ?」
みっちゃんが出た途端、のっけから元気は文句を言った。
「あいつ早速行ったのか? ついお前がこっちにいるって口にしたもんだから、居場所を聞かれたんだよ。ちょっとオフィス寄ってたんだ、今から行く。あ、そういや、豪が探してたんで、あいつにもそこに行くように言っといた」
えっ、と思った時には切れていた。
そうか、豪のやつ、俺のこと聞いてまわって……
狭いエレベーターホールの前で、元気はしばし立ち尽くしていた。
チンという音がしてドアが開いたので、元気は店に戻りかけた。
ところがその腕をエレベーターから降りてきた男にいきなり掴まれて元気は振り返った。
「やっぱり、君だ」
「は?」
「スターになる要素が溢れてる。うちの事務所で君をスターにしてあげるよ。いっしょにおいで」
「…………すたあ?」
陳腐な単語を並べ立てるその男を見ると、どうやら二次会で将清がお前を見てると言っていた男だと元気は思い出した。
こいつ、後をつけてきたのか?
「あのー、そういうのは、もっと若くて可愛い女の子に言った方がいいのでは?」
「きみはっ!」
男は元気の両腕を掴み、エレベーター横の柱にドン、とからだごと押しつける。
「知らないのかね? 今、きれいな男が求められている、しかも実力の伴ったカリスマ的スターがほしいんだよ、大衆は!」
「大衆……って…ちょっと、いてっ…」
鼻息も荒く、ぐいぐいと元気に迫る男は、思ったよりでかかった。
「君……ほんとにきれいだね……こうして間近に見ても……」
イカレテルぞ、こいつ。
押し戻そうとする元気の耳に、またエレベーターが止まる音がした、と思った時だ、唐突に視界が明るくなった。
「てめー、汚ねー手で元気に触んじゃねー!!」
はっと気づくと、今しがた自分に迫っていた男が、ドアにぶつかってずるずると倒れるところだった。
「………豪……お前…、何で………」
怒りもあらわに拳を握り締め、仁王立ちになっている豪は伸びている男よりさらにでかい。
バン! と怒りを静めもせず、豪はエレベーターのボタンを押す。
「どういうつもりだ? 俺をきれいさっぱり無視してたのは、こんなやつといちゃつくためだったのか?!」
いちゃつくだぁ? 豪の下卑た言い方に、元気のこめかみにも怒りのサインが伝染する。
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