たまたま仕事でとあるホテルのラウンジで佐々木と会った良太は、その夜、たまたまリトルリーグからのライバルでもある沢村と飲みの約束をしていた、それが沢村が佐々木にフォーリンラブとなったきっかけだった。
佐々木は、沢村が人気スラッガーであるということでかなり葛藤もあったらしいのだが、傍で見ている良太には、かなりラブラブに思える。
もう、勝手にやってくれ、って感じだったもんな。
七月に沢村の撮影のために大阪のスタジオに行った時も、二人の関係を知っていればあてられっぱなしだった。
まあ、沢村があちこち遠征行くし、なかなか会えないから、余計だよな。
けど、あっちこっち飛び回っているといえば、うちの社長なんか沢村の上を行くからな。
しかも行先、日本だけじゃないし。
工藤高広。
在京のキー局であるMBC時代から鬼の工藤と異名を持つ敏腕プロデューサーとして名を馳せ、工藤が関われば必ず当たるし、起用した俳優もブレイクすると言われているが、実力のないものはスッパリ切り捨てる冷酷非情なやり方で業界では知られている。
その工藤が、MBCをやめてから興したのがこの青山プロダクションである。
映画、ドラマの制作を中心に、タレントの育成、マネジメントなどが主な業務内容で、業績はこの不景気なご時勢にあって右肩上がりだが、万年人手不足のため、社長の工藤と、唯一社員募集の面接で会社を逃げ出さず、今やその懐刀となった良太は、寝ても覚めても仕事のループから抜け出せないでいる。
人手不足の理由としては、主に広域暴力団中山組の組長の甥という工藤の出自にあり、社員募集の広告を出したところで、工藤がその事実を告げると大概、面接で踵を返す。
例え工藤が、一切縁を切っているとしても歴然とした事実は消えることはなく、この会社の社員となっているメンツはほぼ、何かしらワケアリな人間だ。
だからこそなのかもしれないが、良太にしてみると最近では一つの家族のように思えるのだ。
にしても、工藤、どんだけワーカホリックなんだよ!
ちょっとは話くらいしても罰は当たらないだろ!
昨日ニューヨークから戻ったかと思ったら京都に向かうという工藤を、成田に迎えに行った良太は、そのまま東京駅に直行し、車内でも工藤は電話で話していたので、ロクに言葉も交わす暇もなかったのだ。
良太が心の中でグタグタと、社長の工藤に文句を言っていたからか、しばらくして当の本人が戻ってきた。
「あ、お帰りなさい」
「ああ」
返事をしただけマシか、という感じで、工藤が自分のデスクに着くなり、携帯が鳴った。
また電話で何だかだと話し始めた工藤をチラリと睨むと、良太は自分のパソコンに向かった。
別にさ、お帰りなさいって言ったら、逢いたかったよ、ダーリン! なんてのを望んでいるわけでもないし、大体自分で考えてキモイしそれ、沢村と佐々木さんみたいにお互い相手しか見えてないみたいなのがいいわけでもないけどさっ。
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