俺ら沢村たちより古いつきあいなわけだし。
もちょい、こう、何かしらのアレがあってもさ。
ブツブツと良太は心の中で呟いた。
一応、社長でオヤジだが鬼の工藤と、部下で怒鳴りまくられているけれど良太は、一般的に言えば付き合っている関係なのだ。
そこはまあ、良太の方が工藤に刷り込み状態、とか周りではそういう認識なのかもしれないが。
佐々木さんに逢えないと良太にちょくちょく電話してきて沢村は愚痴りまくるのだが、いつ会えるともわからない工藤を待っている良太の方がどれだけ愚痴りたいか、と言いたいところなのだ。
「タレントの都合でスケジュール変更とかできるか! ああ? 風邪をひいて声が出ない? んなもん、健康管理くらいきっちりさせろ! 熱が出た? 仕事しているうちに熱なんか下がる!」
うお、何か揉めてる。
ドラマ出演に穴? とか?
ってより、もろ昭和なパワハラじゃんね。
仕事しているうちに熱なんか下がるとかって、今の若い子には通用しないって、それ。
聞き耳を立てている良太は、工藤の怒鳴り声に一つ一つ心の中で抗議する。
「いいか、次はないって言っておけ!」
あああ、可哀そうに。
相手はマネージャーとか?
「良太!」
電話が終わったらしい工藤が、いきなり良太を呼んだ。
「明日、明後日、スケジュールあけろ」
「え? は?」
あまりに唐突な命令に、良太はちゃんとした言葉が出てこない。
「今夜から軽井沢に行く。準備しておけ」
そう言いおいて、工藤はまたオフィスをたったか出て行った。
「ちょっと待てよ! 俺の都合はどうにでもなるっての?」
既に出て行った工藤に向かって、立ち上がった良太は思わず声を上げた。
はあ、とため息も大きくなるわけだ。
「良太ちゃん、猫ちゃんたちは任せて。今夜からだったら、いろいろ準備もあるでしょ?」
鈴木さんが良太を労わって、早速いつものように猫の世話を申し出てくれた。
「はい、すみません、いつも。お願いします」
良太はぺこりと鈴木さんに頭を下げると、すぐに自分のパソコンに向かって、明日明後日のスケジュールの変更をどうするか、脳みそを総動員にすることになった。
「申し訳ございません、スポンサーから急な変更がございまして、スケジュールを見直させていただきたいのですが」
結局、入っていた打ち合わせなどを別の日に変更してもらうようにリスケをお願いしたり、急ぎやっておかなければならない書類に取り掛かった。
ただ、運のいいことにここ二日ほどの良太のスケジュールは、打ち合わせにしても移動可能な相手だったりで、快く了解してくれた。
まさか、工藤、そこまで読んでた、なんてことはないよな?
工藤の横暴にまだ腹を立てつつも、軽井沢、は涼しいかも、と、げんきんな自分のことは棚に上げておく良太だった。
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