鬼の夏休み22

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 別荘に戻ると、ダイニングテーブルに、ワインクーラーに冷やした冷酒と杉田のメモが置いてあった。
「お酒を召し上がるのなら、いくつかおつまみが冷蔵庫にあります」
 良太が冷蔵庫を開けると、ナスの煮びたし、里芋の含め煮、キュウリの梅肉和えなど、工藤の好きそうな小鉢がいくつか並んでいる。
「工藤さん、飲むんなら、上に持って行こうか? つまみ美味そう」
「そうだな。お前はいい加減食ってきたんじゃないのか?」
 苦笑しながら工藤が言った。
「日本酒にさっぱり系のおつまみって、また別でしょ」
 良太はトレーに冷酒とグラスや小皿に箸、それに冷蔵庫から出したつまみの小鉢を乗せて二階に上がっていく。
 工藤は戸締りを確認してから階段を上がる。
 それにしても、と、パーティでの紫紀とのやり取りを工藤は思い出していた。
 紫紀は物静かに見えて実は精力的だ。
 坂口にせかされてドラマの話を持ち掛けたのだが、言葉上は穏やかな対応でも出てくる言葉は先を読んで、紫紀の頭の中では既に情景が見えているようだ。
 まだメイン以外キャスティングも決まっていないのだが、広告戦略や突っ込んだ内容まで次から次へと提案してきた。
 工藤もそれに応じて紫紀の目指す内容に即応するキャストやシーンに合わせた大体のロケ地の候補まで絞り、ほぼほぼ具体的な領域にまで話は及び、改めて紫紀との仕事は面白いと工藤は感慨深げに笑みを浮かべた。
 紫紀はおそらく上に立って指示するだけでは物足りない男なのだ。
 ある意味鴻池と似ているところがあるが、一つ違うのは、紫紀は正義の信望者だ。
 理不尽なことを嫌う。
 鴻池の全てを駒として扱うような冷酷さは無論もちあわせていない。
「なんかやっぱ、BBQとか、楽しいし美味いけど、においつくなあ」
 ソファセットのテーブルにトレーから酒のボトルを置き、小鉢を並べ、グラスや小皿を置いたあと、良太はくんくんと腕やTシャツの匂いを嗅いだ。
「先に風呂に入ってきていいぞ。俺は適当にやっている」
「あ、じゃあ、とっとと入ってきます」
 風呂に湯を張っているうちに髪の毛が臭う気がしてシャンプーし、ゆすいだ頃には湯が溜まっていた。
 夜になるとぐんと気温が下がり、裸でいると寒い。
 温かい湯に身体を沈めて良太は大きく息をついた。
「俺でこれだけ匂い着くんだから、焼いてる人、かなりすごいよな」
 京助はもともと料理好きなようだから、あまり気にしなさそうだが、涼や大は可哀そうだったよな。
 いくら女避けっつったって、あれじゃ、好きな子だって離れちまうって。
 なるほど千雪さんは匂い着くのが嫌で、俺らの方に避難してたわけだ。
 今さらながらに良太は納得する。

 


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