鬼の夏休み43

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 どうせ極道などとまともに取引なんかできるか、とでも考えていたのだろうとは容易に推察できる。
 いつもそっちで勝手に決めればいい、というスタンスでいるのだが、これが藤田や美聖堂の斎藤には何故か気にいられて、これまで長い付き合いになったりしているのだから不思議だ。
 紫紀の場合は千雪や京助との関係から知り合ったのだが、あたりが柔らかいが切れ者で工藤にしては珍しく何となくウマが合った。
 得体の知れないところもあるが、京助とは性格が真逆に見えてその実、竹を割ったような正義感の持ち主だというところが、工藤にとっては偽りのない付き合いでいたいと思わせる相手だ。
「ああ、工藤さん、良太ちゃん、よかった。ようやくパーティの方はお開きになりました」
 そこへ当の紫紀が現れた。
「しかし、公一くんから聞いたよ。またえらいことを裏でこそこそやってたんだね、千雪くん」
「パーティの邪魔にならんよう、何とか。せえけど、あのお客さんにはちょと待たせてしもたし、なんぞお詫びでもせなあきませんね」
 タブレットから顔を上げて千雪は言った。
「こちらで手配しておくよ。それで京助はまだ警察?」
「みたいですね。結構何台もひとところに盗んだ車隠しとったみたいやし、女の子にパパ活やらせたり、他にも叩けばほこりが舞う輩やないですか?」
 千雪が軽く答えた。
「パパ活? なるほど。まあ公一くんがえらく責任感じてるみたいだが、彼の与り知らないところで起きたんだからね」
「公一さんの後輩のダチの知り合いとか、いうてました」
「ふーん、ま、面接のときにわかれば苦労はしないよな。何かあった時に対応するっきゃない」
 紫紀は感慨深げに頷いた。
 工藤と良太はコーヒーを飲み終えたところで、綾小路を後にした。
「紫紀さんって、なんかほんと懐が大きいっていうか、京助さんとは全然ちがいますよね」
 良太が言うのに、工藤は鼻で笑う。
「そういえば、渡良瀬さん、河崎さんとか佐々木さんのことえらく買ってましたよね? でも佐々木さん、ほんと、仕事量マックスだから、何か頼まれても大変ですよね」
「ああ、まあ、何かあっても来年以降の話だろう」
「ですよね。でもやっぱ、佐々木さんも凄い人なんだって、思いましたよ」
「芸術畑の人間は、自分の容量顧みないで突っ走るから、誰かがコントロールしてやらないと倒れることになりかねない」
 良太は工藤の意見に、おっ、と思う。
 工藤が佐々木さんに対しては甘いのは、そういう理由からなのか。
「そこはまあ、直ちゃんがタズナを握ってるみたいだから」
「ほう?」
 工藤は苦笑し、車の外に目をやった。
 道の両側には樹々が鬱蒼と茂っている。
 子供の頃、こちらに遊びに来てこのあたりまでひとりでよく歩いた。
 綾小路だけでなく、塀に囲まれて誰がいるのかわからないような大きな別荘もよくあった。
 杉田のおしゃべりのせいか、ふと曾祖父母のことが思い出された。


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