Dangerrous Night1

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     ACT 1
 
 
 東京にも雪が降るのだということを証明してくれたどんよりしたねずみ色の空は、どうやらまた次の雪を用意しているらしい。
 正月気分も抜けた一月の終わり、ところは虎ノ門辺りの老舗ホテルに近い道路脇。
「寒い! にしても、おっそいな~。打ち合わせ、そんなにかかるもんなのか。もう真夜中の二時だぞ! いい加減にしろ」
 広瀬良太はジャガーの運転席でブツブツ文句を言ってみるものの、こんなことは今回が初めてではないのだ。
 何がというと、小笠原裕二の不埒極まりない行動がだ。
 小笠原裕二、モデル出身の若手人気俳優で、良太が社長秘書及びプロデューサーという肩書で勤務する、青山プロダクションに移籍したばかりである。
 所属していたマネージメント会社社長にギャラなど億単位の金を使い込まれた挙句、逃げられたというスキャンダルは、一時、マスコミやネットを賑わせたが、ほとんど全財産を使い込まれた小笠原本人は、あっけらかんと、「また、一から出直しますから」と、あっさりしたものだった。
 乃木坂に瀟洒な自社ビルを構える青山プロダクションは、テレビ番組、映画等の企画制作及びタレントの育成、プロモーションが主な事業内容だが、規模は小さくとも、不況真っ只中のご時世にあって右肩上がりの業績を挙げている。
 社長の工藤高広は、在京のキー局に在籍していた当時からテレビ、映画などにおいて数々の作品に手腕を発揮している業界では知らないものがない敏腕プロデューサーだ。
 工藤の悪友で、つい最近フリーとなったディレクター下柳と小笠原は飲み友達らしく、下柳経由で工藤に移籍の話がきたという。
 工藤が広域暴力団組長を伯父に持つ、ということは、業界では知られた話だが、関わりあうかどうかということになると、話は別である。
 例え、縁を切っている、とはいっても、どうしても色メガネで見てしまうものだ。
 だが、当の小笠原は、別にそれを気にするわけでもなく、すんなり仕事に入った。
 ところが人気タレントにはありがちな横柄さと我侭勝手な態度には、あの我侭過剰なアスカですら意見することがある。
「まあ、どっこいどっこいだよな、あの二人なら」
 例によって募集広告を出しているにもかかわらず、彼のマネージャーは決まるようすがない。
 マネージメント業務は今のところ、会社に籍を置く実力派俳優、志村嘉人のマネージャーであるベテランの小杉が兼任しているのだが、彼が志村とともに出張に出ているときなどは、社長の工藤か良太が小笠原の面倒を見ることになる。
 ここのところ、工藤も出張気味なので、ほとんど良太がついているのだが、初めて仕事先に同伴した時などは、あれが欲しい、これが欲しい、はまだいい、仕事のあとで友達と飲みに行った帰り、真夜中に迎えに来い、ときた。
 ぶんなぐっちゃろか、と何度思ったことか。
「なーにが、清涼飲料水みたいなタレント、だよ」
 デビュー当時からの小笠原のキャッチフレーズを口にした良太はぼやく。
 いつぞやは真夜中に女の子と大騒ぎして暴れ、仕方なく、工藤が店に出向いて、それ相当の金額を支払って頭を下げ、場を納めた。
「工藤さんの顔を立てて、今回はちゃらにしますがね。だが、今度やったら、こちらも黙っちゃいませんよ」
 オーナーはひどく腹を立て、下手をすると訴訟問題にもなりかねないところだった。
 良太と工藤、二人で部屋に運んだ飲んだくれてわけもわからない状態だった当の本人は、翌朝、けろっとして、オフィスに現れた。
 当然、工藤には散々怒鳴り散らされたのだが。


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