「バカね、純、何で彼女よ! プラチナブロンドにブルーアイの超イケメンって言えば、アレクセイ・リワーノフじゃない!」
千恵美が声を大にして、まだ理解できていないらしい純の台詞を訂正した。
「はあ?」
「世界のイケメン特集じゃ大抵一位になってるじゃない? あのB・フランコが頼みこんで自分のミラノコレクションでランウェイ歩いてもらったって有名な話知らないの?」
「特集? ミラノ? ランウェイ? さっぱりなんだけど、アレクセイ・リワーノフって、もしか、あのチャラチャラモデルとかとよく噂流してるレーサーじゃねーよな?」
「あたりまえじゃない! そのアレクセイよ」
二人の日本語のやり取りはケンや、続いて入ってきたブロンド人種にはわからなかったようだが、ケンは辛うじて千恵美もアレクセイ・リワーノフを知っているらしいとわかった。
「いつまで引っ付いてんだ!」
ケンはいつまでも自分に引っ付いているアレクセイを引きはがした。
「一体……お前ら、パリじゃなかったのか?」
「ああ、何か、つまんなくなって」
答えたのは後から部屋に入ってきたレザージャケットの下にはTシャツとジーンズの少年だった。
短めのブロンドに深い緑色の目をしているが、純がすぐに目が行ったのはグラインダーのブーツやTシャツのロゴだ。
「こいつが日本に行くって聞かないもんだから、来ちゃった」
アレクセイがロジァの首に腕をまわして付け足した。
「そうなんだ。それで仕方なくうちのエアで」
そして二人の後ろから今度は隙のないスーツで紳士然とした長身の男が現れて、苦笑いを浮かべた。
「ハンスまで?!」
想定外だったのはケンも同様で、ハンスのいきなりな出現に頭の中が混乱し、言葉が続かない。
「で? まさか生き別れの兄弟とか? そちらの可愛い女性は?」
ハンスの問いかけにようやく我に返ったケンは、二人を紹介した。
「父方の従兄の岡本純と母方の従妹の倉本千恵美だ。こちら、ハンス・ゴルトベルガー、アレクセイ・リワーノフ、ロジァ・スターリング、この二人は同僚で、ハンスは友人だ」
ケンは紹介しながら、軽い高揚感に襲われていた。
多分、ひどくハンスに逢いたかったのだと、ケンは自分を分析した。
まさかこういうことになろうとは思わなかったから、享がF1のファンでアレクセイの話題が出た時、ケンはアレクセイの話を有耶無耶にしたことを思い出した。
「悪い、純、隠すつもりはなかったんだが、こういう派手なヤツが同僚ってのも言いづらくて」
ケンの言い訳に「わからないでもない」とチラとアレクセイを見やってから純は頷いた。
「それでケン、ルーツの確認はできたのか?」
ハンスは柔らかい笑顔をケンに向けた。
「きっちりね。双方の誤解なんかも解消できたし」
「それはよかった」
「それに……」
「それに?」
本当の意味でのルーツがわかったのだと、何と説明したらいいだろうと言葉を選んでいるうちに、「これから千恵美のおすすめの店に食事に行くところだったんだって? だったら一緒に行こうぜ?」とアレクセイが言った。
千恵美はこんなところで会えるなんてとても光栄だと、拙い英語を駆使してアレクセイと懸命に話していたし、いつのまにか純とロジァはどうやら同じミュージシャンが好きだというところで意気投合したらしい。
「かまわないよな? すぐに車を手配する」
「いいけど、ハンス、タクシーで行くからな」
ケンは釘を刺した。
ハンスに任せておいたら、リムジンでも用意しかねない。
「そうだ、純、よかったら享も呼んだらいい。F1好きなら、アレクセイとかハンスとかと話したいかもしれないし」
純はケンの提案に、そうだな、と頷いた。
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